6月24日(月)配信 株式会社ユーネームイット 代表取締役 臼田恵
専業主婦をしていたが離婚を機に看護学校に通い、准看護師として精神科や産婦人科での経験を積む。その後高等看護学校に進学し、正看護師の資格を取得。卒業後は精神科に特化した訪問看護ステーションを運営する会社に就職、役員に就任し経営のノウハウを学ぶ。実績を活かしつつ、現場にも出たいと考え、株式会社ユーネームイットを設立、訪問看護ステーション ハピネスを立ち上げる。
笠井:株式会社ユーネームイット、どんなお仕事ですか?
臼田:訪問看護ステーション ハピネスという、精神科に特化した訪問看護をやっています。
笠井:精神疾患に特化した方への訪問看護ってハードルが高いと思うんですよ。その領域で会社を作られて、やってらっしゃると。
臼田:前に働いていた会社が、精神科に特化したステーションを全国展開してる大きい会社だったんですね。そこで訪問看護師をやりながら、役職が上がっていって役員になって、経営のことも教わったんですが、あんまり現場に出れなくなってしまって。やっぱり現場に出たい、利用者さんに直接関わりたいなと思い、自分で会社を立ち上げました。
笠井:やっていて必要とされているお仕事だなって感じますか?
臼田:感じますね。珍しいっていうところもあると思うんですけど、世の中の人からすると、精神科疾患を持ってらっしゃる方って、ちょっと怖いイメージがあると思うんですよね。なので、精神科疾患を持ってる方って生きづらいんですよ。周りに理解されないとか。そういうところをカバーしてあげたり、一緒にできることを協力してあげたりとかが必要とされてると思います。
笠井:精神疾患に特化した訪問看護をやってる人は少ないんじゃありませんか?
臼田:10年ぐらい前まではすごく少なくて、最近は色々増えてきたんですけど。精神科の経験がある看護師じゃないと難しい部分もあるので。
笠井:具体的にどういう症状の利用者さんを見るんですか?
臼田:いろんな方がいらっしゃるんですけども、妄想や幻聴が聞こえる方もいらっしゃいますし、気分が落ち込んじゃうといった方もいらっしゃいますし、統合失調症と言われる方が多いです。統合失調症は昔分裂病って言われてたんですが、やっぱり怖いって思われる方が多くて。
笠井:日本は精神病への理解が遅れていると言われますよね。その辺りはどんなふうに実感してますか?
臼田:病院から退院する時に、住む家がないところ。精神科に通ってるっていうだけで、うちは貸せませんって言われることが多くて。私が保証人になるし、訪問看護が週3回入って見守りするのでお願いしますって言って入らせてもらってる方もいらっしゃるんです。
笠井:保証人にまでなってらっしゃると。そういった方を支える中で、どんなことが課題として見えてくるんですか?
臼田:世の中の人たちに発信することが必要だと思っています。ニュースとかで、この人は精神病院への通院歴があり、事件を起こしましたっていう事だけが皆さんの耳に入っていっちゃうと、精神疾患を持ってる=危ないに繋がってしまうと思うので、そこを払拭したいなと思って。そのためにはメディアで発信していかないといけない。これが私の使命だと思ってやってます。
笠井:そのあたり、我々マスコミの責任もあるんですけれどもね。端的に説明しすぎていて。訪問看護の利用者さんの反応はどうですか?
臼田:皆さん喜んでくださって。スタッフはみんな精神科の経験があって、ベテランが多くて、とにかく人が好きな人が多いんです。スタッフも利用者さんも。利用者さんは喜んでくださって、いろんなお話をしてくれて。
笠井:訪問看護の会社って、まず経営として成り立たせるのが大変じゃないのかなって思うんですけども。
臼田:経営に関しては、どのくらい利益があるとかってあんまり考えたことがなくて。税理士さんとかに任せてるんですけど。訪問看護をちゃんとしていれば、それがくっついてくるというか。利益とか経営を考えるというよりも、ただ単に利用者さんのところに訪問して、お金になるって言ったらあれなんですが。
笠井:スタッフに給料も払わなきゃいけませんし、お金が回らないと事業ってできないから、対価をもらうことは悪いこともなんでもないですよね。ボランティアじゃできませんから。現状で会社としては回すことはできてるわけですね。
臼田:できてますね。うちはパートさんも多いんですけど、パートさんにもボーナス出ますし、有給も出るし。お給料は多分すごくいいと思うんです。社労士さんからこんなに出してる会社ないよって言われるぐらいなので。
笠井:しっかりと良い形で寄り添うことによって、対価がちゃんと回ってくるんですね。宣伝して営業してお客さんを獲得するって話とはちょっと違う感じがするんですよ。どうやって利用者さんが広がっていくんですか? 紹介?
臼田:そうですね。同じ疾患を持ってるお友達にハピネスがいいよって言ってくれたりとか。あとは、精神科医の先生が患者さんに紹介してくれたりとか。
笠井:信頼がないと先生も紹介はしませんよね。では、その会社の理念は?
臼田:精神科の経験がある、知識がある、専門性が高いスタッフが訪問するっていうところと、地域の先生たちの信頼を得て、情報共有をして、地域で利用者さんを見ていくっていうところです。
笠井:看護師一人ではなくて、地域で見ていくっていう考え方なんですね。それが幸せに繋がっていく。
臼田:そうですね。皆さんが生きていく上で、地域で暮らしていくわけですから。
笠井:臼田さんの未来へのビジョン、これからの目標はなんでしょうか?
臼田:お住まいに困ってらっしゃる方がいるので、不動産部を立ち上げて、アパートを作って住んでもらうっていう形を作っていきたいなと。
笠井:精神疾患の方が住みやすい街を作るためには、不動産もやった方がいいと。精神疾患を持つ皆さんの状況を良くしよう、だけではなくて、その生活も支えたいという深い思いがあると。もう一経営者の想いを超えてるなって感じがするんですけども。
臼田:かもしれないですね。
笠井:世の中を変えたいってやっぱ思ってらっしゃる。より良い社会ができることを私も願っております。