8月12日配信回
2024.08.12

8月12日(月)配信 株式会社きーとす 代表取締役 森弘幸

略歴

1986年に日本工業大学電気工学科を卒業後、マスプロ電工株式会社に入社。2012年には株式会ミニーに入社。30年近くサラリーマンをしていたが、その後、父親の不動産事業を引き継ぎ、2017年に株式会社きーとすを起業。

笠井:株式会社きーとす、お仕事内容は不動産とお聞きしましたが。

森:そうですね。いわゆる不動産屋さんではなく、自社物件のものだけを管理してる会社です。

笠井:そもそもお父様が不動産業をやっていらしたとか。

森:実は、元々農家なんですね。父が高齢でだんだん動けなくなってきまして、少しずつ1棟、2棟と始まって現在のスタイルになりました。

笠井:最近マンションの値段が高騰してるとか、不動産は結構景気のいい話も多いように思うんですが、実際やっていてどうですか?

森:法人は別として、個人でやるのはかなり大変だと思います。

笠井:今はどういう建物をどんな風に貸してらっしゃるんですか?

森:今は全部で18棟管理しています。今建っている物件は、昔全部畑と田んぼだったところなんです。

笠井:昔から土地をたくさん持っていらっしゃった?

森:そうですね。江戸時代、元禄から今のとこに住んでますね。もう300数十年ですかね。

笠井:ただ土地持ってるだけだと相当固定資産税とかかかっちゃいますよね。でも貸しビル業は、経営としてはうまく回るものなのではないかな、と思ってしまいますが、甘いんですか?

森:様々な縁があって今は上手くいってますが、この先どうなるかわかんないですね。

笠井:お仕事をやっていく中で、楽しい瞬間はなんでしょうか?

森:事務所の裏にもいくつか棟があるんですけど、入居者さんと顔見知りになっちゃうんですよ。やっぱりうちの事務所の前を毎日通るので。

笠井:森社長は、大家さん的な存在なんですね!

森:転勤とかで引っ越される時、もっと長く住みたいと言われる方が結構いるので、ああ、成功してるんだなと思います。

笠井:一番大事なのはそこですよね。貸しビル業をやっていく中でのコツというか、長く続けるための考え方はなんでしょうか?

森:どうですかね。一棟建てるのに億単位のお金がかかるわけです。

笠井:そうなると、融資で借金って話になりますよね。

森:基本的にはそうで、現金でやる方はまずいないと思うので。そうすると、やっぱり30年ぐらいお金を借りるわけですよね。30年間保つような建物にしないと難しい。どんなものを求められるか、先が読めないんですよね。だから、うちでは例えば1Kでも、ガス台は3口つけたり、お風呂は戸建てと同じサイズを入れたりして、ちょっと差別化をしました。そうしたら、ここはお風呂がいいと見ていただいて入居していただいている、ということも結構あります。

笠井:先を見越したニーズをどう捉えるか、そこも大事なんですね。きーとすの企業理念はなんでしょうか?

森:理念というか、真面目にコツコツやるしかないですよね、やり続けるしか。不動産って売り上げがほぼ平らで。多少上がり下がりはあるんですが、やはり返済期間が長いですから、収入そっくりそのまま利益になるわけではないので、7割ぐらいが返済に回ってしまう感じですね。

笠井:黙っていても収入があるみたいなCMはたくさんやってますけど。

森:皆さんそう思ってると思いますよ。実際は4%ぐらい取れたら御の字じゃないですか。

笠井:家賃の設定も含めて、大家さんにはどれくらい権限があるんですか?

森:もう不動産屋さんにお任せですね、借りてくれなきゃもうどうにもならないですから。

笠井:あとは、空き室が増えてくると焦るとか?

森:サブリースでやってるところは、空いても不動産屋さんにそのまま払ってもらえるところがあるんです。

笠井:そういう仕組みがあるんですか、借り上げというか。

森:大手じゃないと出来ないですが、うちはサブリースのところと普通の不動産屋さんとどっちもやってます。どっちが成功するかわかんないですから。

笠井:企業理念に、人がやらないことをやろうと思ってますって話があったんですが。

森:それはサラリーマン時代の社長が言ってたことで、人のやらないことをやれと。

笠井:それをどういうところに生かしていらっしゃるわけですか?

森:不動産さんによく言われるのは、「大家さんそこまでやんなくていいよ」とよく言われます。事務所の裏にあるもんですから、目に入っちゃうじゃないですか。草が生えてるとか、ゴミ箱が荒れてるとか。行くとちょこっと直しちゃうんで。自分の物件ですから、やっぱり大事にしますよね。

笠井:大家さんの顔が見える、時々来て掃除してるみたいなのは、やっぱり大事なことなんでしょうね。

森:そうですね。近所にも賃貸物件があるんですが、荒れ放題のところもいっぱいありますから。

笠井:私たちが外で考えているような賃貸業とは違う側面でやっていかないと。

森:例えば1棟とか2棟持ってる方はそこまで気にしてないと思います。アパートの雰囲気もありますけど、その街の雰囲気、例えば掲示板とかあると思うのですが、古いのがそのままになってると、この街はなんなの?となる。ゴミ箱もそうですよね、綺麗に片付いてるかどうか。

笠井:そういうところって住んでる人間にとってはすごい大事ですよね。だから細かく目を配っていくということ。でも、それって逆に言うと面倒でもあると思うんですけども、そこまでやるのはどうしてでしょうか?

森:賃貸業って自分のところさえ良ければ良いってイメージではなくて、街全体が変わって欲しい。私も自治会に結構噛んでるもんですから。

笠井:1棟立てるのに30年で億単位の借金して、また1棟立ててっていうのは、なかなか根性がないと出来ないですよね。

森:だんだん高齢になってくると、うちの親父もそうですけど、90歳になってお金は借りたくないよってなりますよね。僕はいずれそうなるんだろうなと思いますけど、あと30年経つと92歳になりますから、その時はもうとてもじゃないけど今のようなことはできないと思います。

笠井:きーとすの未来へのビジョン、どんなところがありますか?

森:今金利も上がって来てるし、もう30年ぐらいすると建て替えなきゃいけない建物がポツポツ出てくるんですよ。それを切り抜けるというか、やるしかないですよね。やっぱり先祖から引き継いだものをなんとかして残したいっていうのはあるんで。残したいと言っても、3代続いても無くなっちゃうって世界ですから。そこをなんとか、次の自分たちの子供ぐらいまでは残せないかなって、そういう考えでやってます。