8月19日(月)配信 株式会社新日本エントランス 代表取締役社長 浦山久志
1967年富山県魚津市生まれ。立正大学経営学部を卒業後、大手サッシメーカーに入社。1995年に鋼製建具施工販売会社ユーテック株式会社を設立。2020年、直下型地震に対応した耐震ドア「たすかるドア」を発表し、翌年板橋防災賞を受賞。2021年には、たすかるドアを中心に製品を販売する株式会社新日本エントランスを設立。現在、建物の開口部から住んでいる人々の「たすかる」を提供するため営業活動を展開している。
笠井:新日本エントランス、どういったお仕事になりますか?
浦山:古くなった玄関ドアやエントランスのドアをリニューアルする会社になっております。
笠井:浦山さんはお父様がアルミサッシの加工工場を経営されていて、大学卒業後大手サッシメーカーに就職されたと。そこから独立され会社を立ち上げ、地震に対する耐震ドア、「たすかるドア」を開発されとのことですが、こちらはどういったドアですか?
浦山:簡単に言いますと、扉が開かなくなった場合、真ん中にもう一つ避難用の扉がありまして、その避難用の扉を使って逃げることができるという発想のドアでございます。
笠井:私、YouTubeで紹介動画を見て驚きました。学校に防火扉ってありますけども、閉めた後、小さなドアを開けて出入りできるようになっているじゃありませんか。そのアイデアを一般の家のドアに取り入れた感じですよね。また、この「たすかるドア」は板橋区で板橋防災賞を受賞されたと。開発のきっかけはなんでしょうか?
浦山:阪神淡路大震災の時に、古いマンションだけではなく、大きな揺れで建物が変形してしまい玄関ドアが開かなくなって、犠牲になられた方が多かったのです。そこで、今までの玄関ドアではダメだということで、なんとかして大きな地震、特に直下型地震、阪神淡路大震災は直下型地震だったので大きな被害が出たと思いますが、同じような地震が来た時でも逃げることができるようなドアにしなくてはいけないと思いまして、これを開発しました。
笠井:私も地震取材に行くと、特にマンションの上の方に住んでると、閉じ込められてどうにもならないっていうような状況がありました。たすかるドアについて、他のメーカーさんの製品との違い、こだわりはどんなところになりますか?
浦山:今までの耐震ドア、他社メーカーさん作られている耐震ドアは、基本的に横揺れの地震に対応している扉です。それは日本のJISさんやBLさんの規定(BL部品認定制度:財団法人ベターリビングが定めた基準に適合する製品を優良住宅部品として認定する制度)が、横揺れの地震の時に開放すればいいという規定なので、それに基づいて作られています。
笠井:もうこの30年で8割ぐらいの可能性で起きると言われている首都直下地震は直下型ですよね。
浦山:そうなんです。阪神淡路大震災の時に開発させていただいたこの扉は、直下型地震が発生した時に、どうしたら扉が開けられるか。また開けられるだけではなくて、閉められる。阪神淡路大震災の時には、閉じ込めだけではなくて、火事場泥棒の被害も非常に多く出たんですね。それはなぜかというと、開放できればいいという今の規定で作られた扉は、閉まらないと鍵をかけられないんですね。
笠井:もう家が歪んでると扉は閉まらないですよね。でもたすかるドアは、ドアの中にドアがあるから開閉ができると。つまり、縦揺れに耐えられるように作っているわけですね。
浦山:避難扉の周りの、本扉の部分がクラッシャブルゾーンになってまして、その部分で衝撃を吸収しますので、中の扉と鍵は守られているんです。ですから、その中の扉から安全に避難できて、かつ施錠ができるので、逃げた後の泥棒への心配も少なくなるんです。
笠井:皆さんにはぜひYouTubeをご覧いただきたい。たすかるドアで特許取ってるんですって?
浦山:今回特許を取ってるのは、この中の扉が開くという部分ではないんです。たすかるドアには通風機能がつけられていて、そこの部分で特許を取らせてもらってます。マンションの玄関扉は、特定防火設備という扉にしなくてはいけなくて、これは消防法、建築基準法で決められているんです。これは火事が起きた時、扉は常に閉まっていないといけないという条項なんですけど、風を通すためにドアを開けておくと常に閉まってない状態になるので、それはもう違法になってしまうんですよね。ですので、そのあたりをちょっと細工しまして、火災が起きた時には閉まる扉になってます。今またコロナも騒がれ始めてきましたけれど、マンション、集合住宅って、玄関扉とベランダのサッシを開けると一気に風が抜けるんですよね。玄関扉を開けることは非常に重要なことなんです。
笠井:それで避難用の中扉が開くようにして、火災が起きた時は閉まるようにして、避難する時は鍵もかかる、防犯的に安全で風通しが良くなると。災害時は特に築年数が結構立ってるマンションにお住まいの方は不安がありそうですよね。
浦山:昭和56年以前の旧耐震の時代に建てられたマンションは、やはり地震の影響を受けやすいので、そういう建物に住んでらっしゃる方は、不安に思われている方が多いかもしれません。
笠井:耐震補強をマンション全体にするとか。立て替えるとなると、もう考えられないぐらいお金がかかるじゃありませんか。だからまずは玄関だけでも出入りできるようにすれば。閉じ込められないという防災ができるってことなんですね。
浦山:そうです。自主防災という点が大きいんじゃないかと思います。ちょうど2週間前ぐらいに、同じことをマンションの管理組合の方から言われまして。築56年なので、耐震補強をすると数億円かかってしまう。そういう費用はない中で、居住者の命を守るということを優先して考えた結果、この扉を検討したいというお問い合わせがありました。
笠井:この仕事をしていて嬉しい瞬間ってどんな時がありますか?
浦山:八王子の方で数十世帯への設置をやらせてもらった時に、やはり通風機能が欲しいと言われていたんですが、メンテナンスで再度行った時に、半分ぐらいの方が避難扉を使って通風されていたのを見て、あの時は非常に嬉しかったです。
笠井:最後になりますけれども、未来のビジョンをお願いします。
浦山:ぜひ、この扉をご採用いただきまして、助かる命が助かるようにご検討いただければと思います。ご家族、自分だけではありません。奥さんもいます。お子さんもいます。おばあちゃん、おじいちゃんもいらっしゃると思います。ぜひ、自主防災で助かる命が助かることを選択していただきたいなという風に思います。