10月21日(月)配信 有限会社日米文化学院 代表取締役 柳田浩靖
1971年生まれ。中央大学法学部卒業後、1999年に日米文化学院へ入社し、2008年に代表取締役に就任。小学1年生から高校3年生を対象とした学習塾で、外国人講師による英会話スクール、珠算・速読教室、外国人講師の派遣など幅広い教育事業を展開している。現在は自身の受験経験をもとに、「安心して間違えられる環境」を重視し、本質的な学びを提供することに力を注いでいる。
笠井:日米文化学院、学習塾なんですね。どんな学習塾ですか?
柳田:父が40数年前に始めた塾です。当初は英会話スクールと合わせて学習塾が併設されていた形でした。私自身は進学塾部門で、小学校1年生から高校3年生を対象に指導をしています。また、現在でも小学生を対象にした英会話スクールと、珠算教室や学校への外国人講師の派遣事業などを行っています。
笠井:お父様の仕事を引き継がれたという形のようですが、経歴を拝見しますと、いろんな塾に通われたようですね。中高大の受験は、様々な予備校に行くことによってクリアしてきたということですか?
柳田:いや、もう全部失敗したんです。中学受験では四谷大塚の最上位コースにいたものの、第一志望の開成中に失敗。高校受験でも、当時開成高への合格者が多かった塾のトップクラスにいたのですが、父親の一言で断念して。だから、大学受験では「東大行こうか!」と思ったものの、途中で予備校の面白さにハマってしまって失敗。大学入学後は「司法試験だ!」となりましたが、結局は受からなかったという・・
笠井:いや、とっても面白いお話で、今学習塾で成功している社長さんが、あらゆる受験に失敗しているというのは、ここは逆に言うと、何かありそうですね。
柳田:自分の受験でうまくいった指導者は、生徒が失敗した時の気持ちがわからない、ということはあると思います。その点、自分は、「どうしたらうまくいかないか?」は知り尽くしています。また、自分がいろいろな塾に通う中で、塾業界の裏側みたいなところも見てきました。この業界でやっていく中で、自分ほどいろんな試験を経験して、業界の裏側も知っている人間はいないんじゃないかという変な自信はあったんですよ。
笠井:塾における教師の魅力とは何かってことも、すごく学ばれていそうです。
柳田:今は、アクティブラーニング的に「主体的な学び」ということがよく言われます。しかし、教わること、その先生に薫陶を受け、感化されて勉強を始めるというところが、本来の塾のあり方だと思っています。それを自分が肌感覚でずっと味わってきた気はしています。
笠井:受験における塾の使い方に関してプロフェッショナルな生徒さんでもあったということ。それを今塾経営に活かしていらっしゃる。塾経営の中で、ターニングポイントとなった何か出来事ってありますか?
柳田:まだ地元でも評判が立たないような頃に、たまたま地元の大手塾でトップを張っている子と出会いました。生意気でしたが面白い奴で。ひょんなやり取りから「タダで教えてやるから明日から来いよ」って言ったら、その子が本当に来てしまって。教えているうちに、うちの塾に転塾することになったんです。その子が「夢は内閣総理大臣」と言うものだから、「じゃあ、東大に行こう。東大行くために開成高に行こう。」って。結局、彼が私にとって初めて開成に合格させた生徒になりました。「あとは、東大に行って財務官僚から政界だな!」なんて話していたら、実際に東大現役合格して財務官僚にもなりまして、実は今回の衆議院選挙で立候補することになりました。
笠井:ドラマみたいですね。そういった経験がやっぱり自分の塾経営に生かされているわけですね。
柳田:そうですね。さすがに今から自分が、例えば政治の道に進んで世の中を変えるのは難しい。だから、教え子たちを育て、その子たちが関わる人々を幸せにすることで、よりよい社会にする一端を担いたいとは思っています。
笠井:ホームページを見ると、みんな楽しそうですよね。親御さんも生徒さんも非常にアクティブな印象を強く受けたんですが、塾経営をする上で大切にしていることはどんなことですか?
柳田:まず、塾の一番の目標は、成績を上げることや第一志望に合格することで間違いありません。しかし、第一志望合格というのは、残念ながら必ず叶うわけではありません。但し、その過程で勉強の仕方を身につけることができれば心配ありません。勉強は大人になってからも続くものだから、むしろ、合格よりもその方が大切だとさえ考えています。当塾では「勉強する」とは、「出来なかったことを出来るようにすること」と定義しています。「当たり前じゃないか!」と思われるかもしれませんが、すごく難しい。何が難しいって、まず自分ができないことを受け入れるっていうマインドを作るまでがすごく難しいんですよ。中には、「どうしても間違えたくない」という子もいます。「間違ったらお父さん、お母さんに怒られる」、みたいなこともあります。だから、まずは「間違ってもいいよ」と伝えること。「間違ってからが勉強のスタートだよ」ということを、生徒に理解してもらうために、「安心して間違えられる環境作り」を大切にしています。
笠井:今の世の中って、失敗しないこと、リスクを回避していくような生き方が安全という、そういうマインドが強いんですよ。それを安心して間違えられる、そこが出発点だと。安心して間違える、を教えた子たちはどうなっていくんですか?
柳田:そこに気づければ、自分で勉強できるようになります。間違えていいんだって思ったら、思い切って間違えるんです。勉強には繰り返しが大切です。30秒考えてわからなかったら、すぐ解答を見ても良いのです。そこで理解して、次回から自分の力で解くことができれば、その先に行ける。結局、それを繰り返していくことしかないと思います。
笠井:最後になりますけれども、未来へのビジョン、どんなものをお持ちですか?
柳田:子供たちの明るい未来を作るために子供たちを笑顔にしていくということが本当に大事だと思っています。勉強することの楽しさや、人を幸せにするとはどういうことか、を伝えることで、その子供たちが日本の未来を明るくしてくれる。自分が塾講師をやっている意味はそこにあります。私は、先ほどお話した男が内閣総理大臣になったら日本は変わると思っているので、そんな明るい未来を思い描きながら日々教壇に立っています。
笠井:日本の未来を作るって、やはりお子さんをどうするかっていうことでもありますからね。是非ともこれからも頑張っていただきたいと思います。