12月23日配信回
2024.12.23

12月23日(月)配信 有限会社ojim 代表取締役 伊藤次郎

略歴

杏林大学卒業後、鉄筋工を経て松屋フーズに転職、新店起ち上げ事業に携わる。体調を崩したことをきっかけに眼鏡業界へ転職し、平成6年に独立。自身も効果を実感したことから、ドイツ式ポラテストのノウハウを習得し、処方を開始。肩こりや頭痛の改善に繋がると評判を得る。現在は「路面店単店で年商日本一」の目標を掲げ、業界改革を目指している。

笠井:有限会社ojim、メガネ関係のお仕事のようですね。

伊藤:吉祥寺で眼鏡の小売店をやっています。

笠井:経歴を拝見しますと、大学卒業後、社会人として最初に鉄筋工を始めていらっしゃるんですね。

伊藤:僕、酷くやんちゃで20歳ぐらいの時に、数百万の賠償金のような請求をされて、それを親に肩代わりしてもらったんです。さすがにダメな僕でも、このままじゃいけないと思って、手っ取り早く稼げるのが鉄筋工でした。

笠井:借金返済のために、まずはガテン系のお仕事に就いたという。借金を返してすぐに辞めたんですか?

伊藤:いえ、それがどっぷりハマってしまいまして、8年続きました。素晴らしい仕事でしたね。仕事の段取りの大切さとか。周りにいる方々の職人気質の方々とか、本当に優しくて面倒を見てくださって、もう人間味に溢れた方々ばかりでした。

笠井:僕、よく引き算の円と足し算の円って言うのですが、マイナスなことがあっても、そこからプラスのことが訪れるという。

伊藤:あの経験は一切無駄になってないです。今の仕事でも、段取りの大切さは若い人に全て伝えてます。

笠井:眼鏡屋さんの基本は鉄筋工にあると。面白いですね。辞めた理由は?

伊藤:膝と腰がいっぺんに壊れてしまったのが理由です。やはりあれはスーパーマンでないと続けられないですね、一生は。僕の体はあまりにも脆弱でした。

笠井:そこで、いわゆる眼鏡店というお仕事に就いたのはどんな経緯なんですか?

伊藤:その次は松屋フーズで5年間店長をやりながら、地方を転々として、新店立ち上げチームをやりました。そして今度は安売りの眼鏡屋さんに行きました。でも入ってすぐに会社の経営が立ち行かなくなってしまって、自分が経理をやっていたので、この会社が自分の給料が払えないということは誰よりも先にわかるわけですよ。でも、僕はその社長が大好きだったんです。その社長に恩返ししなきゃいけない。「僕は負担になりたくない、余ってる機材を僕が買い取るから、社長はもう一度立て直してください」と言いました。という形で、無理やり独立したのが20年前です。

笠井:すごい話ですね。だって、経理担当者が機材を私が買うからって。なかなかできないことですよ。もう元々独立気質があるお方だ。

伊藤:いつかは独立しようと思っていました。でも、眼鏡業界に入ってたかだか2年半の経験で独立するって言ったら、もう誰もが馬鹿にするし、驚かれる。

笠井:そのパワーはどこから生まれたんですか?

伊藤:僕、過去の転職で2回、体を壊して辞めたのですが、その2回とも本業を全うできず逃げたような感覚があったんです。今回お世話になった会社を辞めるとなった時に、辛い道はどっちだろうと考えたんですよ。眼鏡屋さんの雇われ店長になるのと、独立するの、どっちが辛いか、明らかに独立の方が辛い。じゃあ、僕は逃げたくないから、攻めようと言って独立しました。独立してからは背中を押してくる風ばかりを受けましたね。だから本当にただツイてたとしか言いようがないんです。

笠井:ツイていたとか、運が良かったとか、この番組に出てくださる方の中にも一定数いるんですよ。でも僕、違うと思うんですよね。運が良かったってだけで、絶対ここまで来れない。なぜなら、色々とお話を拝見すると、独特の目の検査方法なんかも勉強してるじゃありませんか。

伊藤:ドイツ式のポラテストっていう、権威の先生とご縁をいただいて、その技術の一部を習得したんです。

笠井:どういう技術なんですか?

伊藤:ドイツ式のポラテストっていうのは、斜視と斜位という言葉があるんですけれど。プリズムというものを使った斜位矯正をすることに長けている技術です。

笠井:その技術をもって独立していったということですね。

伊藤:お客さんが泣いて喜ぶんです。大げさじゃなくて、「伊藤さん、あなたのおかげで仕事ができるようになった」とか、「あなたのおかげで頭痛が止まった」と。

笠井:斜位っていうのはどういう状況を言うんですか?

伊藤:目線を隠した時に、僕の場合だったら目が外に開くんですけど、日本人で言うと9割ぐらいの方は外斜位なんですね。その斜位の矯正、プリズムを眼鏡に組み込むことも、ほぼ普及されていないんです。

笠井:斜視って言葉は知っていても、斜位は知りませんでした。でも、それで悩んでいる方も実はいるわけですよね。

伊藤:単純に目が疲れやすかったり、慢性的な頭痛、肩こり、眼精疲労。このようなことが引き起こされる。ただ、それすらも非常にミクロの話で、体全身に影響を与えてるというのが、最近やっとわかってきました。

笠井:そんな中で、プリズム眼鏡を出された。これはどういう眼鏡ですか?

伊藤:レンズというのは、厚みのある方向に光が屈折するという要素があるんです。それによって近視矯正も遠視矯正も乱視もできているのですが、プリズムによって、パソコン作業とか、手元作業、スマホ見るでもそうなんですけど、常に寄り目をしているんですね。プリズム眼鏡には寄り目の運動量を下げる効果があります。外斜位であれば、目が反り目になっていて、反り目からパソコンを見るためには、ぐっと寄せますよね。寄せる時にレンズを置くことによって、外に目が開いてもいいようにする。その分運動量が減るんです。今現状は日本では特別ですし、レンズメーカーの出荷ベースで言うと、プリズムを組み込む処方比率は約3%なんです。本当に少ない。日本では斜視の方に対してプリズムを入れるのが主流であって、斜位矯正のためはほぼ普及してないと思います。

笠井:これからどんなことを考えてらっしゃいますか?

伊藤:根なし草だった僕が拾ってもらったのが眼鏡業界ですから、まず眼鏡業界に恩返しする。今、眼鏡業界って雑貨化してしまったんですね。どこの業界でもそうで、デフレ経営によって低価格化して、その時に真っ先に切り捨てられたのが眼鏡の機能性なんです。だから僕は職人さんを育てる手間、そして眼鏡を仕立てる手間、うちは検査を一時間するんですよね。でも、そういう手間に対して理解のある顧客を育まないといけない。僕は賢明なる顧客が健全な業界を育むって言ってます。業界をドラスティックに変えていかなきゃいけないと思ってます。

笠井:それはなかなかアグレッシブな、ビジネスの考え方ですね。お客さんに寄り添っていく、歩み寄っていくことを主眼としているビジネスも多い中、お客さんの意識を変えていくことによって、業界も、業態も良くなっていくんだという、逆転の発想。しかし、それはさっきから言っている、楽な方と大変な方どっちを取るかと言ったら、大変な方を取ろうという、そのマインドですよ。

伊藤:幸せなものは、不幸な顔してやってくるみたいな。だから、不幸に見える方を選んだ方が、結局ご褒美が待っていると僕は思ってるんです。だから、辛い方を選ぶように僕はしていますが、結果的に、お客様が目の前で泣いて喜んでくれているから、もうそれで十分報われています。

笠井:そうなんですね。いや、その生き方に刺激を受けました。これからも困っている皆さんのために、良い眼鏡をお作りください。