3月10日(月)配信 株式会社グローバルマスタリー不動産鑑定 代表取締役 柳澤泰章

1960年東京都葛飾区生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業し、日本電気ホームエレクトロニクス株式会社に入社。1993年不動産鑑定士二次試験に合格し、翌年株式会社東京アプレイザルに入社。2000年に不動産鑑定士登録。2018年、株式会社東京アプレイザル代表取締役に就任。2023年1月に退任し、株式会社グローバルマスタリー不動産鑑定を設立、代表取締役に就任。
笠井:不動産鑑定。土地の価格の評価はどういう時に必要なのでしょうか?
柳澤:不動産鑑定士は、不動産の適正な価格を出す仕事です。古くは地価公示や、相続税の路線価など、不動産のプロとして、適正な価格がいくらなのか、賃料がいくらなのかを、公的な書面として出せる唯一の資格です。
笠井:興味深い経歴ですが、慶応義塾大学経済学部を卒業された後、日本電気のホームエレクトロニクスに入社されている。全然関係ない会社ですよね、これはどういうことなのでしょうか?
柳澤:元々は宣伝の仕事をしたかったので、大手の代理店を志望しました。でも、そこには入れず。メーカーの方の宣伝部にたまたま配属できて、仕事はしていたのですが、やっているうちに、やっぱり一生サラリーマンでは終わらないだろうなと。次、何をやろうかというのが正直見えなかった。
そんなある時、六本木で友人と酒を飲んでいる時に、たまたま同席した女性が不動産鑑定の事務所で働いていますと。それまでその資格を知らなかったので、話を聞いたところ、その女性の先生がいうには、人を裁くのが弁護士、会社を裁くのは公認会計士、税理士で、不動産を裁くのは不動産鑑定士だと。そこでなんか面白そうな資格だなと思いまして。比較的人数が少なかったので、もしかしたら天職になるかもしれないと思いました。
それが32歳の時です。そこから会社を辞めて、資格を取りました。
笠井:資格を取って会社を辞めたのではなく、会社を辞めて資格を取ったと。そこは結構決断ですね。
柳澤:自分を追い込んだ時期がありまして、3か月間必死になって勉強しました。たまたまうまく合格して、それから約30年以上この仕事に携わっています。
笠井:転職先は不動産鑑定を行う東京アプレイザルという会社ですが、2018年にその会社の社長になりました。いわゆる中途入社で社長になったのですね。相当な頑張りが必要だったのではないでしょうか。
柳澤:そうですね、たまたまなったようなものですが。
笠井:たまたまって言いますけれども、たまたまじゃないと思いますよ。やはり相当努力をされているのだと思いますが、社長になって、グローバルマスタリー不動産鑑定という自分の会社を作られたということは、退任時期が来たのでしょうか?
柳澤:いや、やっぱり一から会社を興して仕事をしたかった、自分でこういう会社を作りたいっていうのがありました。

笠井:不動産鑑定士としてどういう仕事をされたかったのでしょうか?
柳澤:世の中には、鑑定士という仕事がどういうものなのかあまり知られてなくて。なので、本来我々の仕事ってそこじゃないのではないかと思うことがありまして。
僕の好きな言葉に「新しい酒は新しい革袋に盛れ」というのがあり、やりたかったことを実現するために、一から一人でもやろうという感じで、社名も自分の好きな名前を付けてスタートしました。
笠井:会社のホームページを見ましたら、まず高難度案件を請け負うと標榜されています。不動産鑑定における高難度案件とはどのようなものなのでしょうか?
柳澤:一体いくらなのかがわかりにくい不動産のことです。例えば崖地の価格とか。崖地の価格も、相続税では結構な価格がつくことがあります。
笠井:相続するときに、土地の価格がしっかりわからないと分割が難しくなるということですね。
柳澤:相続するには崖地でも価格をつける必要があります。それが何千万もついてしまったら、誰も買いませんよね。
笠井:崖地には価値がないと思ってしまいますが、そうではないのでしょうか?
柳澤:相続税の評価、税務上だと価格がつきます。崖地って結構広いですから、下手すると1億円という価格がつく場合もあります。
笠井:そんなところに税金払うことになったら、もう失望しかないですよね。その先の相談には乗っていただけるのでしょうか?
柳澤:まずその崖地の適正価格を我々が出し、それを税務署に認めてもらうという形で進めますが、税務署が納得するような書面で理論的に評価するというやり方でやっています。

笠井:難しい案件は避けて、もっと効率の良い仕事をやりたいと思う人が多いと思うのですが、なぜ難しい案件を真っ先にやりますと標榜してらっしゃるのでしょうか?
柳澤:お客さんに喜んでもらうことが嬉しくて。
笠井:確かに、解決してくれればより喜びが高まりますね。
柳澤:私としても、仕事としての充実感があるので、あえて難しい仕事を請け負いますと言っています。
笠井:世の中の難しい案件にチャレンジしようということで作った会社。まさにそこは、大きな会社の社長さんではできないことですね。ある種ニッチというか、みんなが手を出さないようなところをやっていこうとされている。
柳澤:不動産で悩まれている方はもう本当にいっぱいいますから、一人でも多くの人に貢献したいというところから、難しい案件を解決できる会社で貢献できればと思い、会社を作りました。
笠井:これからのビジョン、目標はどんなことありますか?
柳澤:まずは知名度を上げたいですね。不動産で困ったらまずは鑑定士に相談しよう、となるような世の中にしたいなと思います。
笠井:それは自身の会社というより、不動産鑑定という仕事の知名度を上げたいということでしょうか?
柳澤:そうです。弁護士と言えば何をする仕事かわかりますよね。ですが、不動産鑑定は、大方何をやっているかの想像はつきますが、実際周りに知っている人もいないという状況なんじゃないかと思います。当然不動産を持っている人はその価値を上げたいですよね。
それを上げるためには、健康診断が必要。不動産鑑定は不動産の健康診断のようなものだと思っていて、まず価格が出ますから、この不動産の本来のパフォーマンスを発揮するために、例えばこれだけの投資額が必要ですみたいな話もできるし、不動産鑑定をやることで、その不動産の未来も見ることができます。その不動産が10年後にどんな形になっているかも、ある程度予想はつきますので、そういった視点からのアドバイスもできると思います。
