5月26日配信回
2025.05.26

5月26日(月)配信 デンタルクリニック江戸川橋 院長 小川理栄

略歴

1975年生まれ。北海道医療大学卒業後、歯科医師として20年以上の経験を持ち、2019年にデンタルクリニック江戸川橋を開業。北海道医療大学および日本大学の臨床研修科で兼任講師も務めた。予防歯科・インプラント・再発防止の治療を軸に、審美と機能の両面にこだわった補綴や歯周組織再生療法を提供。漢方や薬膳にも精通し、患者の健康を総合的にサポートしている。

笠井:デンタルクリニック江戸川橋は、文京区地下鉄有楽町線江戸川橋駅からわずか3分、

駅前の歯医者さんっていうことですが、主にどんなところに力を入れてらっしゃいますか?

小川:一番力を入れているのは予防歯科です。悪くなってから行くのではなくて、主にメインテナンスだけで歯医者に通う。それでも、ごく僅かに起きてしまったトラブルだけ治療するという方針を基本にしています。

笠井:虫歯を治して、それで終わりではないということですね。

小川:初めて歯医者に来る方は、大抵虫歯や、歯が揺れるとか、歯茎が腫れたというトラブルでいらっしゃいます。どうしてトラブルが起きたのかを理解していただき、その後メインテナンスで通っていただいています。

笠井:小川院長の経歴を拝見しますと、北海道医療大学を卒業後、2000年から歯科勤務医として診療を開始されて、2019年に独立されて、デンタルクリニック江戸川橋を開業された。歯医者さんになったきっかけはなんですか?

小川:親の意向そのものです。父が歯医者だったので。

笠井:少し健康を害していたことがあるそうですが、どんなご病気だったのでしょうか?

小川:今考えると、ちゃんと精神科に行けば診断されたと思いますが、メンタルですね。北海道と東京の二拠点で仕事をしていた時は、朝始発の飛行機に乗って、札幌に行って、午前中向こうで診療し、午後は東京に帰ってきて診療するのをずっと続けていたので。どんどん痩せていって、もう体が食べ物を受け付けなくなってきて。

笠井:そういう経験をされていると、普通に健康に生活していることの大切さを考えますよね。私が癌になった時にすごいそう思ったんですよ。

小川:具合が悪くならないと、健康のありがたみってわからない。なので、無茶をしながら生活している方たちは具合が悪くなってから後悔すると思いますが。ずっと健康な方って、そういう言葉をかけてもあんまり気付けないんですよね。

笠井:親御さんの意向に従って階段を上っていくということが、なんとなく順風満帆な人生のようにも思うのですが、ターニングポイントとなった出来事はいくつかあるみたいですね。

小川:やっぱり父が亡くなったのがかなり大きかったと思います。

笠井:亡くなったことでどんな決断を強いられたのでしょうか?

小川:大黒柱なので。弟が二人ともまだ歯科大の大学生だったので、なんとか稼がなきゃいけなくて。

笠井:次の決断はこの北海道のご実家の歯科医をやめることでしょうか。

小川:はい。母親の期待が大きかったので、期待を裏切って、ごめん、やれないわっていう、その一言がどうしても出なくて、実家と東京の二拠点生活をやっていたのですが、一週間尿が全く出なくなったんですよ。それが最後の決断で、このままだと死ぬなと思って。

笠井:やっぱりご実家をどうするかが、常に心の負担になっていた生活だったのですね。三つ目は独立ですよね。今の江戸川橋の駅前の、自分が長く勤めていた歯科医院を、自分が院長になるために買い取ったということですね。

小川:20年頑張ってきたんだから、思いやりのある金額にしてくれたらいいなって思ったんですが、なんとその3、4倍くらいの価格で。

笠井:でもその高い買い物を決断した。その決断の結果、今どう思っていらっしゃいますか?

小川:苦しいですが、やってよかったなと思います。患者さんたちが、いてくれてよかった、と言ってくれるので。

笠井:後半は三つのキーワードをお伺いしております。まず一つ目は、モチベーション。仕事のモチベーションの源は?

小川:患者さんの笑顔です。それが医療人にとって何よりのご褒美かなとは思います。快適に食事ができるとか、普通の生活を快適に送れるのは、歯が1本痛いだけでも無理じゃないですか。それがなくなったというだけで、生活の質が向上して、楽しそうになってくれてよかったなみたいな。

笠井:先生は患者さんの生活の部分まで見ていらっしゃるのですか?

小川:患者さんが初めていらっしゃった時に、どこが痛いんですというだけじゃなくって、日々の生活、食生活、どんなもの召し上がっているのとか、お仕事でどんなストレスがあるのかとか、人間関係がうまくいっているのかとか、今大変な時期なんじゃないのとか、どんどんどんどん突っ込んでいます。

笠井:それは多分珍しいですよね。これまで60年の間、そこまで踏み込んでくる歯科医の先生はほとんどいなかったです。第二のキーワードが信念ですが、どういったところに信念をお持ちでしょうか?

小川:本当に昔からの考え方の、痛くなったら通うのではなくて、ここから先20年30年後も健康でいたいという思いで通ってもらいたいと思っています。寝たきりになってしまったら、それは幸せとはちょっと違うじゃないですか。健康な体を持っているから楽しく生きられるんだと思います。

笠井:なかなか歯が痛くならないと歯医者さんに行く気が起きないと思いますが、そういった歯が痛くない患者さんを病院に連れて来るというのは難しくありませんか?

小川:患者さんに治療をして治すまでの間に、この先もずっとこの状態でいたいというモチベーションをどれだけ保てるかだと思います。

笠井:ホームページを見て驚いたのは、カウンセリングの先生がいらっしゃるそうですね。どうしてカウンセリングの先生がいるのですか?

小川:先生が出てくるだけで、まだ恐れ多くてこんなこと言えない、と思う。ちょっとしたことを抱えたまま帰る人たちが多いだろうなと思って。

笠井:患者はね、我慢するものなんですよ。これはもう癌でもなんでもそうです。特に昭和患者は、ちょっとくらい痛くてもまた痛くなったら来ればいいかと我慢してしまう。そうならないようにカウンセリングの先生がいて、心の奥底を引き出していく。その全身の健康のために、歯医者さんの領域から少しこう広げて色々やってらっしゃるんですね。

小川:そうですね。漢方薬を使ったり、舌の状態からその人の体調を見たりとか。

笠井:地域のデンタルIQの向上を目指しているって話を聞いたのですが。

小川:はい。うちに来て、虫歯とか歯周病は予防できる病気だということが頭の中に根付いて、どうしたらいいのかを知った人たちが生まれてくじゃないですか。人は得意なことを人に喋りたくなりますよね。「これ知ってる?」みたいな感じで、周りに広めてもらえれば、どんどん地域全体のベースが上がると思っていて。

笠井:江戸川橋は虫歯が少ない、みたいな。

小川:はい、そうなりたいです。

笠井:第三のキーワードは未来へのビジョン。ビジョンの1つに、更年期歯科女性外来というキーワードをお持ちだと聞きました。

小川:日本は女性の更年期の研究がちょっと遅れていて。症状があっても、更年期だからしょうがないと我慢している方が大勢いらっしゃる。更年期障害の一つとして歯や舌が痺れるような症状を訴えるようになることがあるのですが、何件も歯科を回って、どこにも異常はないですって言われて、最後の砦と思っていらっしゃってくれた方が多いです。仲間内の歯医者の先生のところにも似たような患者さんが多くて。で、一人が声を上げてやらないかと。

笠井:更年期歯科女性外来というのを作りたいという考えの人たちがいると。まだ無いのでしょうか?

小川:まだ無いです。医科の方ではあるみたいなのですが、歯科の方にまで降りてきてないので、そのうちタッグを組めたらいいなと思っています。