8月25日(月)配信 株式会社リトル・サイエンティスト 代表取締役 野村恭稔
名古屋大学卒、大阪大学工学博士。リトル・サイエンティスト、GS、フィオラボ、野村総合粧剤研究所を起業。高分子ケラチンを開発し、形状記憶スーツなどに応用。バイオ染料の研究で繊維学会論文賞を受賞。
笠井:さて、リトルサイエンティストのお仕事内容を教えていただけますか?
野村:もともとは子どもに科学を教える学習塾を目指していました。
笠井:そうですか。それで、リトルサイエンティストという名前なのでしょうか?
野村:はい。子どもが小さい頃からいろいろなことに興味を持つようになってくると、アメリカの方では「リトルサイエンティストがやってきた」と言って喜ぶそうです。
その新鮮な気持ちをずっと持ち続けることができる会社を作りたいと思って、まずは子どもの勉強、学習塾みたいなのを作ろうと準備をしていました。
笠井:そうなのですね。
野村:それでアパートの一室で、子どもたちが休みの日に実験をするということをしていました。
笠井:実際に学習塾もされていたのですね。
野村:はい。
笠井:学習塾の一方で、今のメインのお仕事は何でしょうか?
野村:化粧品の開発、販売、製造販売です。やはり一番利益が出る部分ですね。実は私は42歳まで研究者をしていたのです。
笠井:そうですか。どういう会社でどのような研究をしていたのですか?
野村:日本合成ゴム、中日本繊維工業協同組合墨総合研究所という会社に属していました。日本合成ゴムでは、微生物の遺伝子を使って、新しい原料を作る研究をするために、大阪大学に行かせていただき、そこで勉強しました。その研究を武器にして新しい会社を作ろうと考えていました。
笠井:リトルサイエンティストを作ったのが、42歳ということでしょうか?
野村:43歳ですね。かなり遅咲きです。ただ、起業の道具として、中日本繊維工業協同組合墨総合研究所にいた時に、水に溶けるウールというものを作って、それを微生物に食べさせて、何かできないかと研究をしていました。羊毛は面白いのですが、ずっと放っていくと、カビみたいなのが生えてきて、そこのところが赤くなったり青くなったりするのです。それを利用して何か色素が作れないかと考え、新しい天然染料というのを作りました。

笠井:そうだったのですね。このリトルサイエンティストで開発した技術というのが、羊毛ケラチンというキーワードがあると聞きました。これはどういうものでしょうか?
野村:髪の毛と同じ成分です。髪の毛も肌も爪もケラチンです。この羊毛ケラチンを羊毛につけると、形状記憶スーツができることが分かりました。この成分を髪の毛につけたらどうなのだろうかと研究したところ、やはり髪の毛が丈夫になって、枝毛がなくなったり、パーマがかかりやすくなったり、カラーが落ちにくくなったりという現象が起きました。この技術は使えるかもしれないと考え、リトルサイエンティストを創業し、商品化を目指しました。
笠井:その商品はどのような商品だったのでしょうか?
野村:当時は原料でいうと「プロテキュート」という名前が付いていましたね。日本でも世界でも珍しい、高分子ケラチンというタイプのケラチンで、それを髪の毛につけると、髪の毛に残って、髪の状態をより良く保つために役立つとされていました。
笠井:それは、消費者向け、それとも、プロ向け・美容院向けだったのでしょうか?
野村:まずは美容院向けで開発しました。
笠井:そうですか。
野村:その後、美容室で使ってくれた有名人が「良かった」という内容を、SNSで書いてくださったことで広まりました。
笠井:やはりSNSの効果はすごいですか?
野村:すごいですね。やはりそのために、我々が代理店や問屋さんで、宣伝していたときは小さな会社ですから見向きもされませんでした。それがお客さんの方から「この商品ないですか」とサロンさんに連絡が来たことで、代理店さんが増えていきました。
笠井:製造は間に合いましたか?
野村:最初の工場では小さすぎて間に合わなかったので、今は第2工場まであります。
笠井:やはりどんどん売上が伸びているという状況なのですね。
野村:そうですね。

笠井:特許とかは取っていらっしゃるのですか?
野村:取っています。
笠井:そうですか。つまり、研究者として独立されて、羊毛ケラチンというものを発見して、商品化したことで、今の成功につながっているのですね。研究者として独立されたときは、まだケラチンも事業化できていなかったということですが、結論がどうなるかわからない中で、起業をするというのは、怖くありませんでしたか?
野村:実験もいろいろ行っていたので、自信はありましたね。ケラチンを大量に使った商品を作れる会社を探しましたが、なかなか見つからず、だったら自分で作るしかないと思いました。ケラチンが多く入っているため、1本5,000円くらいのシャンプーなのですが、高くてもすごく売れたのです。
笠井:飛ぶように売れたのですね。
野村:はい。やはり雨の日に髪の毛がくしゃくしゃ・ボサボサになってしまう方たちが使うと、それがなくなることが多いという結果が出ていたため、売れたと思っています。高くても買ってくれる人がいるのであれば「これが商売になるのだろう」と考えました。
笠井:「1本5,000円のシャンプーやトリートメント剤は売れるわけない」と一般的に思いそうですが、研究で素材のことが分かっているからこそ「ビジネスとして成立する」という確信があったのですね。
野村:そうですね。
笠井:企業理念はどのようなものがありますか?
野村:企業理念は、基本的には、子どもの科学者の目のように、新しいものを見る、目をつけて、新しいものを作っていくということです。化粧品にこだわらずに、いろいろなものができたらいいなと思っています。今は「もし鳥の羽で糸が作れたら、どんなに面白いのだろう」と思い、研究をしています。
笠井:すごい夢をお持ちなのですね。
野村:そして、子どもたちが喜んでくれて、「リトルサイエンティストに入りたいな」と思ってくれる子どもたちが増えたらいいなと思ってます。
笠井:そうですね。これからも、お体を大事にされながら、さらに研究を続けてください。
野村:はい。ありがとうございました。

