7月29日(月)配信 シスクラウドジャパン株式会社 代表取締役社長 稲嶺充毅
1970年生まれ。岡山大学経済学部を卒業後、世界最大の外資系ITサービス会社に入社。その後、アメリカ、日本、インドでセキュリティソフトウェアの会社を起業、買収。2024年2月に米国に本社を置くクラウドバックアップの日本法人、シスクラウドジャパン株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。現在、外資系、インド、日本など複数の企業の役員、顧問も兼務するなど、グローバルに活躍。
笠井:シスクラウドジャパン株式会社、どんなお仕事になりますか?
稲嶺:弊社の行っている事業は、SaaSデータのバックアップ、セキュリティ、コンプライアンスなどのサービスの提供です。
笠井:SaaSデータっていうのは?
稲嶺:SaaSというのは、簡単に言いますと、クラウド上で利用できるソフトウェアやデータの事で、最近日本でも普及が進んでいて、ほとんどの企業で導入されているサービスです。今まではパソコンの中にデータを置いて、アプリケーションはインストールしていましたが、それらが全てクラウド上に置かれるというイメージです。なので、それらを所有する事自体必要がなくなり、サービスだけを使うことができるようになった、それがSaaSが普及している一番の理由だと思います。
笠井:Microsoft365だとか、Officeのソフトだとか、GmailとかZoomとか。別にアプリケーションを持っていなくても使えますよね。クラウドっていうと、DropboxとかGoogleドライブとかOneDriveとか、パソコンにあるものをクラウドにあげる。Evernoteなんかもそうですけど、そうすることによって、パソコンを失くしても大丈夫なんていう話がありますけども。そういうことのバックアップをお仕事にしていると?
稲嶺:はい、そうです。実はですね、 SaaSデータのバックアップは本当に必要なのですが、世の中にその必要性が認知されていないのです。弊社では、このサービスを提供するにあたり、まずはバックアップの必要性を伝える事から始めています。
笠井:すみません、自分の常識と違う話になっていて、いわゆるバックアップのような形でデータをクラウドにあげているイメージなのです。だから、データをクラウドにあげていれば、PCが壊れても、ノートパソコンを失くしても安心と思っているのですが、それはちょっと違うということ?
稲嶺:そうですね、少し違います。実際には、SaaSなどクラウド上で作業して保存したデータというのは、きちんとクラウド上に保存されています。Microsoftにしろ、Googleにしろ、一つのデータをいろいろな拠点に置いて(レプリケーション)、一つが壊れても、他の場所にちゃんとデータは残っている仕組みを提供しているので、その点ではとても安心できます。ただ、実はそれが誤解を招く一つの大きな点になっていて。実際のユーザーは人間なので、そのクラウドのデータを間違って消したり、間違って書き換えたりという事が起こる。また、ランサムウェアでファイルが書き換えられるというような状態も起こりえますが、MicrosoftやGoogleなどほとんどのクラウドサービスは、それらの場合でも誤った状態をきちんと保持してくれるサービスなのです。
笠井:間違って消しちゃった時、ゴミ箱に入っていれば復活できるけども、本当に消しちゃったり、ウイルスに感染して消されちゃった時に備えて、バックアップを取っておくのがシスクラウドジャパンのお仕事なのですね。
稲嶺:そうです。なので、ファイル自体が間違って書き換えられたり消されたりした場合でも、Googleがその状態を保存してしまうと、書き換えられたり消されたりする前の状態はわからないじゃないですか。ゴミ箱に入っていたのも、何十日間とすると消えてしまうのです。もうその消えてしまったファイルは戻せないのですが、バックアップを取ってあれば、少なくともバックアップを取った時点までは戻せると。
笠井:そのお仕事って、新しいけど重要ですね。
稲嶺:これまで、パソコンの中にあるデータをバックアップするというサービスはありました。それが今クラウドになったので、バックアップは要らないだろう、そういう誤解をみな持っているのですね。そこで弊社としては、データがクラウドに上がってもバックアップは必要です、本当に大切ですよ、ということを訴求していくことから始めているのです。
笠井:シスクラウドは、そもそもアメリカの会社なのですか?
稲嶺:はい、アメリカのニュージャージーに本社があります。
笠井:稲嶺さん自身は元々IT系の会社に入っていたみたいですね。
稲嶺:元々私は高校時代から社長になりたいという考えを持っていました。初めに外資系のIT会社に入ってエンジニアになったのですが、社会人経験4年ぐらいで、もうこの辺りで会社を変えないと自分のやりたいところに行けないなと。そして最初に転職した先、これも外資系だったのですが、そこでいろいろなメンターの方々に起業したいって話をすると、アメリカとか海外の方がいいよ、そっちの方が市場が大きいから日本よりいいじゃないって言われて。
笠井:で、アメリカで企業し、日本でも起業し、インドでも。その会社はどんな会社だったのですか?
稲嶺:起業した会社はコンピュータのセキュリティの会社です。
笠井:そこからシスクラウドジャパンになると。どういう経緯で?
稲嶺:アメリカ、日本、インドと会社を切り盛りして、ワールドワイドで製品を作って販売してって経験を経て10年前に日本に戻ってきまして、その時に海外のシスクラウドジャパンの創業者から、日本に進出したいので手伝ってくれないかという話がありまして。クラウドはこれから世の中に広がっていく、しかもバックアップが大切だっていうのも日本ではあまり知られていない、これはやる価値があるなと思いました。日本ではまだ需要が喚起されていない時期から進めていたのですが、10年近くたって今年ようやくビジネスを開始したという経緯です。
笠井:アメリカなんかではもっと前からクラウドのバックアップをやっているわけですね。
稲嶺:そうです。アメリカの方がSaaS市場自体かなり先に進んでいて、日本よりも5年から10年進んでいる気がします。もちろんGoogle、Microsoftがアメリカの会社だからっていうのもあるとは思うのですが、日本でようやくSaaSが導入され始めたのが7、8年前くらいですね。その後SaaSやクラウドが一般的になってきて、バックアップが必要だと言われ始めたのがここ最近です。
笠井:仕事における稲嶺さんの信念っていうのは、どんなものがあるのですか?
稲嶺:私の信念は決まっていて、ワクワクすることや、心踊ることを中心にやっていく。何か心踊らないなっていう時は、きっと何か引っかかる事があるのですよね。モラルに反するっていうのもあるでしょうし、自分がこれまで積み上げてきたスキルが活かせない、やりがいが無いっていうのもあるでしょうし。色々あるとは思いますが、自分がワクワクする、心が踊るようなことをやりたい。それもあってアメリカで会社を作ったり、シスクラウドのような日本に無い製品を扱ったり、やりたいことをしています。
笠井:最後に未来へのビジョン、これからどんなことを考えていますか?
稲嶺:シスクラウドのような、日本に導入して、これからみんなに使ってもらえるような、役に立つ良い商品をどんどん紹介していきたいっていうのもありますし、私の持っている会社の自社商品も、データコミュニケーションでいろんなことができるんですね。なので、データコミュニケーションのインフラになるぐらい、デファクトスタンダードになるような製品作りをどんどんやっていきたいです。