11月24日(月)配信 医療法人誠心会前原総合医療病院 理事 前原光佑
1985年生まれ。2011年に帝京大学医学部卒業後、2013年に鹿児島大学病院初期研修を経て、鹿児島一円の大学病院や地域の基幹病院およびNTT東日本関東病院にて臨床経験を積む。2015年に麻酔科標榜医・認定医、2020年に整形外科専門医、2023年にはペインクリニック科専門医・いたみ専門医と複数の専門資格を取得。また、2020年には前原総合医療病院を開業し、理事兼「痛みの専門医」として勤務。また、現在までに47つの事業所を展開している。
眞鍋:総合医療病院ということですが、かなり大きい病院なのですか?
前原:そうですね。様々な科があるのに加え、医療に関する福祉の施設などもあります。
眞鍋:医療にまつわる福祉関係の施設もあるのですね。
前原:現在は、総合病院を中心として、様々な施設を持っています。やはり外来のみの方もいれば、短期入院・長期入院の方、終末期の入院の方もいます。全てをまかなえるわけではありませんが、自分たちにできることは「全てやる」ということを大切にしています。
眞鍋:開業されたのはいつ頃ですか?
前原:もともと母体となった病院はあり、2020年に今回の前原総合医療病院という病院を新たに開業させていただきました。
眞鍋:前原さんのご専門は何になりますか?
前原:そもそも僕は痛みに関して興味があり、研修のときに痛みに関連する整形外科、麻酔科、ペインクリニック科のどれを選ぶか迷っていました。先輩にアドバイスを求めたところ「全部専門取ればいい」と言われ、軽く「そうですよね。全部の専門をとります」と言ってしまったのです。法律上は全部とれるのですが、当時はこんなに専門医を取るのが難しいとは知りませんでした。10年かかって、専門医を取りましたね。
眞鍋:3つの専門医を取得したのですか?
前原:整形外科、麻酔科、ペインクリニック科、さらにいたみ専門医をとりました。

眞鍋:痛みに興味をもったきっかけを教えてください。
前原:小さい頃に、遊んでいて左足に鉄パイプが串刺しになり、歩けない可能性があるほどの怪我をしました。整形外科の先生に取り除いてもらったのですが、「痛み」はすごく嫌だという記憶があります。ただ、こんなに痛いものを患者さんも我慢してるのかと思い、今があります。
眞鍋:痛みに関することを多く知っているからこそ、できることはありますか?
前原:ありますね。やはり「薬とリハビリだけでやっていきましょう」と言われて何年もやってる方や「もう手術しかないですよ」という方、「もうこの痛みとうまく付き合っていきましょう」と言われた方が私のもとに相談に来ることが多いです。病院で痛みを訴えたら、いきなり「手術しかないですよ」と言われると絶望しますよね。メンタルが強い方なら動じないかもしれませんが、普通は「手術の前になにかできることはないか」と思うはずです。
眞鍋:そうですね。
前原:そのため、手術以外の方法としてブロック注射などを案内しています。手術よりは心理的な負担が少ないと思っています。また外来では、医学的なことも聞きますがお仕事や趣味まで聞きます。
眞鍋:それは何のためですか?
前原:患者さんが治療でどこまで求めているかを把握するためです。例えば、主婦の方は最低限日常生活が送れるまでは治した方がいいですし、デスクワークが中心の方でも「先生、私は絶対野球がしたいのです」という方は、野球ができるまで回復することが最低ラインになります。
眞鍋:患者さんが求めてるゴールの位置が違うのですね。
前原:それぞれライフスタイルが違いますので、そこにあった治療をする必要があります。患者さんに寄り添った医療を心がけています。

眞鍋:治療で大切にされていることはありますか?
前原:僕は医療は心だと思っています。実は、自分の中で失敗したと思っていることがあります。
眞鍋:何ですか?
前原:若手時代にすごく勘違いをしていたのです。僕は世間一般で一流と呼ばれる病院で修行して、身につけた技術を患者さんに提供したら、患者さんが喜ぶと思っていました。しかし、ある日患者さんに「痛みは確かに治ったけど、もっと私の意見を聞いてほしかった」と言われたのです。そのときにすごく泣きそうになり、妻にその日の出来事を伝えたのです。そしたら妻に「医療のために患者さんがいるわけじゃないでしょ。患者さんのためにあるのが医療でしょ」と言われ、大事なのは自分の満足ではなく、とにかく患者さんの満足度なのだと気がつきました。妻からの言葉が、痛みの専門医としての大きな転機になりました。
眞鍋:その治療の方針も、きっといろいろなアプローチがあるわけですよね。
前原:ありますね。今、インフォームド・コンセントという言葉がありますよね。患者さんに同意を得て、納得してもらった上で治療するという意味です。ただ、僕はインフォームド・セレクトを行っています。患者さんに治療方法を選んでもらいます。もちろんそれぞれの治療方法の内容や医者としてオススメの治療方法については説明しますが、基本的には患者さんに選んでいただくことを優先しています。
眞鍋:確かに患者さんが本当に求めるものは人によって違いますので、希望に寄り添うというのは大切なことかもしれませんね。番組の後半は3つのキーワードでお仕事への向き合い方を伺ってまいります。1つ目のキーワードはモチベーションです。どういうふうにモチベーションを保っていますか?
前原:患者さんの「ありがとう」という言葉と、患者さんの少しでも楽になったという表情の変化を見ると、心からのありがとうが伝わってくるため、それが一番嬉しいです。あとは、家族の存在ですね。
眞鍋:可愛らしい娘さんがスタジオに遊びに来てくださっていますが、家族の存在はモチベーションになりますよね。そして、2つ目のキーワードは信念です。大切にしていることはなんですか?
前原:先ほども言いましたが、僕は医療は心だと思っています。知識とか技術を高めることは本当に大事です。ただ、患者さんの心に寄り添って、患者さんの満足度を高めることは、それ以上に僕にとっては大事なことです。僕は神様では無いですし、医学は魔法ではないため、その人を完璧に救えるとは思っていません。全員を完璧に救えるとは思っていませんが、自分の目に届く範囲の人だけは支えたいですし、幸せになってほしいと思っています。そしてやはり僕が治療してもらえて良かったといってもらえるような医療を目指していくことが信念です。
眞鍋:患者さん優先という気持ちが伝わってきました。そして最後になりますが、3つ目のキーワードは未来へのビジョンです。次にこういうふうなことをやりたいということを教えてください。
前原:今は患者さんがお医者さんや病院を選ぶ時代です。患者さんに選んでいただくためには、独自性を持つことが大切だと思っています。さらに言えば自分本位ではなく、患者さんの希望に沿ったアイデンティティを持つべきだというふうに思っています。それは人によっては技術であり、知識であり、でも僕はそこに心を求めたのです。だから僕は優しいお医者さんを目指すということが僕の今後の未来へのビジョンかなと思ってます。
眞鍋:オンリーワンを目指すということですね。痛みの分野も福祉や介護の分野もやられているとおっしゃっていましたが、高齢化が進んでいる今、患者さんの生活の質ということを考えると、希望に添うということが大事になりそうですね。
前原:大事ですね。やはり2045年をピークにして高齢化が進むと言われていますので、痛みの治療だけではなく、介護もすごく深く関わってくると思います。だからこそ今後は、在宅医療など多くの職種の人と連携して、地域全体で痛みとともに生きる人を支える仕組みをつくっていきたいです。
眞鍋:これからも、そのビジョンに向かって頑張ってください。今回はありがとうございました。
前原:ありがとうございました。

