7月1日配信回
2024.07.01

7月1日(月)配信 関東文化財振興会株式会社 代表取締役 宮田和男

略歴

1965年生まれ、茨城県出身。法政大学を卒業後、茨城県の教諭として勤務。茨城県教育財団埋蔵文化財部の調査研究員を経て、2012年に独立し、関東文化財振興会株式会社を立ち上げ。主に公共事業案件の遺跡発掘調査及び報告書作成業務を行う傍ら、ボランティア活動の一環として学校や各種団体へ赴き、郷土史や考古学に関する授業を行っている。

笠井:関東文化財振興会株式会社は発掘をする会社でしょうか?

宮田:そうですね、ビルを建てる予定の土地などの遺跡の発掘を頼まれます。本来、国や県や市がやるべきって言う人もいるんですけど、東京都などはあまりにも量が多いんで、民間に委託しています。

笠井:私、東日本大震災の取材で、南三陸の高台移転時に遺跡が見つかって、工事が一回止まったんです。発掘をしなきゃいけないと法律で決まってるんですね。

宮田:そうですね、埋蔵文化財保護法がありまして。発掘をしないと建物を建てられない場所があるんですよ。

笠井:株式会社ということは、発掘を民間の会社でされているんでしょうか。

宮田:元々県の研究員だったので、研究と発掘をやってまして、その流れで独立してこの会社を作ったっていう形ですね。

笠井:発掘のお仕事ってあるものなんですか?

宮田:よく聞かれるんですけども、一つの小さい県で、例えば茨城県でも二万ヶ所ぐらい遺跡があるんですよ。縄文時代からずっと住んでた人たちの家が全部遺跡になりますから。

笠井:従業員の方など、会社はどれくらいの規模なんですか?

宮田:少数制でやろうと思いまして、調査員7名で。調査したものを、例えば一年かけて本にするんです。遺物の写真を撮ったり、接合したり、図面を書いたり、竪穴住居のGPSの結果で図面を作ったりと、それぞれ専門職があります。

笠井:掘るだけじゃないんですね。資料を作って行政に提出すると。法律上そういうことが必要なわけですね。

宮田:報告書をつくる方が人数が多いです。労力としてはそっちの方が多いですね。

笠井:仕事へのこだわりはなんでしょうか?

宮田:私たちは調査研究員ですので、実際に調査をして、遺跡で情報を得るのが仕事で、そこでスキルを生かす。大学の先生はそれらの資料を元に論文を書かれますけども、私たちは研究員じゃなくて調査研究員なので。責任もありますんで、調査を重点的にやるってとこが一番重要。できるだけ情報を取るっていうところですね。

笠井:会社として経営が成り立っていくものなんですか?

宮田:厳しいです。私もやっと12年経って知らない人からも委託を受けるようになりましたけど、大体公共事業の場合は入札なんですよ。そうすると、希望していたよりも低い金額になる場合もあるんです。しかしスキルは生かしたいので、結果的に赤字ってわかっていてもやる場合もあります。でも経営者としては失格なので、委託された会社に事情を話して交渉していく。うちの社員と実際に発掘する人、場合によっては100人以上の人たちの食い扶持にもなるんで、昔の生活を掘る=私たちの生活に生かさなきゃいけないので、やっぱり苦労がありますね。

笠井:歴史的意義があるからといってボランティア活動ではないということですね。その中で売り上げを上げるために気を付けてらっしゃることは何ですか?

宮田:ボランティアでない以上、発掘したものを一般市民の方に知ってもらう、還元したいっていう気持ちが強いんです。生涯学習の講師をやったりとか、小学校に出向いたりとか。お金はもらってるけども、ただの仕事だって思われたくないんです。ただの仕事ではないので、実際に子供たちと触れ合ったりして、教える喜びも感じられるように、お金じゃないところにも従業員の喜びを増やしてあげたい。

笠井:宮田さんのこれからの未来へのビジョンを教えていただけますか?

宮田:遺跡の発掘って赤字になるものなんですよね。でもそうではなく、お金を生み出すような調査ができないかと。例えばみんなが見学をする時にお金を集めて、それを保存処理に回してもらうとか、観光に使うとか。あとは、今私の方でメタバース化をやっていまして。例えば、世界遺産は山ほどありますが、発展途上国は歴史遺産にしたくないんです。お金がないんですよ。ユネスコとかから色々もらってもお金がないんで。そうじゃなくて、例えばエジプトのピラミッドだってまだまだいっぱい埋まっていますが、発掘すればどんどん解明されていくので、お金を集めて発掘をする。その代わりに、メタバースを作っていいと特例を出してもらう。

笠井:発掘したものを、メタバースの中で再現していくと?

宮田:そのメタバース上のエピラミッドの中でライブをやったりとか、国際会議をやったりとか、メタバース空間を他の会社に貸して、その賃貸料の一部を例えばエジプト政府に渡すと、現代のインフラが整備できるわけです。そうすると発掘と未来が繋がってくる。遺跡とか文化財を金のなる木に変えてしまって、その金を遺跡のために回したら、もっと保存活動とか調査活動ができるんです。

笠井:宮田さんは過去の考古学の方かと思っていたら、未来のことを考えて、一番新しいところに行っていますね。遺跡のメタバース化でこれからを見据えていると。

宮田:ホームページにレジュメがあるので見て欲しいんですが、ぜひ応援していただきたいです。