11月10日配信回
2025.11.10

11月10日(月)配信 豊前総合法律事務所 弁護士 西村幸太郎

略歴

略歴:中学生の頃、映画「評決のとき」を観たことをきっかけに、「言葉の力」で人を救う弁護士に惹かれた。愛する地方でゼネラリストとしてリーガルサービスを提供することを決意。広島大学法科大学院を修了、司法修習を経て、弁護士登録後、弁護士法人あさかぜ基金法律事務所(福岡市)勤務。3年間の修業を経て、福岡県で最も弁護士が少ない東部・豊前地域で、弁護士会の支援も受けながら、豊前ひまわり基金法律事務所を開業。その後、支援を外れて個人事務所化(定着)し、豊前総合法律事務所と名称変更。「骨をうずめる覚悟」で、地方のインフラとして、「私にしかできない」弁護活動を続けている。

眞鍋:福岡にある法律事務所だと伺いました。

西村:福岡といえば福岡市、博多だと思いますけれども、東の端にある豊前市というところに事務所があります。大分県との県境で、福沢諭吉のふるさとである中津市の隣にあります。

眞鍋:博多からは離れているのですね。どうして豊前市で開業しようと思ったのですか?

西村:これは単純で、弁護士が40年くらいいなかった地域だったためです。

眞鍋:豊前市に弁護士がいなかったのですか?

西村:そうなのです。

眞鍋:ただ、やはり人がいればそこに需要はあるわけで、豊前市でいろいろな方の相談を受けてらっしゃるのですね。

西村:そうですね。東京のように弁護士が多くいるところではなく、弁護士が少ないところで、私にしかできない市民へのサービスを届けたいという思いで開業しました。

眞鍋:今、軸にしているのはどういう分野ですか?

西村:申し上げた通り、周りに弁護士がいないもので、基本的には駆け込み寺みたいな機能もあるため、何でもやります。その中でも力を入れている事業は大きく3つあります。1つ目は、交通事故が非常に多い地域のため「人身傷害」、お怪我なさった方の損害賠償請求等に力を入れています。2つ目は、終活です。これが一番注力しているところになります。

眞鍋:終活というのは人生の終わりを考えるということですか?

西村:そうです。もちろん弁護士の通常の分野として相続というのがありますが、それよりも前の事前対策の分野として終活というのに力を入れています。そして、3つ目は終活に関係する企業様のサポートですね。「人身傷害」と終活と企業支援というこの3つに注力している事務所になります。

眞鍋:終活は、今後ますます必要になってくるジャンルですよね。

西村:私もそう思います。

眞鍋:実際に何か起こってからではなく、「そろそろ考えようかな」という相談もありますか?

西村:そうですね。実際のところはまだやっていないけど「何から始めていいかわからない」という相談はいろいろな年代の方からいただいております。それこそエンディングがかなり近づいている方の相談もありますし、その子ども世代の方の相談もあります。私が主催している終活のイベントには、20代から40代の若い方も参加されています。

眞鍋:若い方は、親御さんのことではなく、自分のエンディングのことも考えているのですか?

西村:そういう方もいらっしゃいますね。

眞鍋:私は40代半ばですが、まだ考えてなかったです。終活を軸にされるようになったきっかけはあるのですか?

西村:そうですね。もともと人の死というのは必ずあります。亡くなった後に揉めてしまう案件のご依頼も経験があります。その中で、やはり揉めるよりも幸せな相続をもっと作っていきたいという思いが強くなり、相続の事前対策分野に興味を持ちました。具体的な事例として「妻に所有物を全てあげる」という内容の遺言を残している方がいました。問題なさそうな遺言ですが「所有物」とは何を指しているのかで揉めてしまったのです。

眞鍋:所有物に含まれないものは何がありますか?

西村:そうですね。皆さんは預金をお持ちだと思うのですが、預金は厳密に言うと物ではなく「債権」になります。

眞鍋:遺言を書いているときには、そこまで分からないですよね。

西村:そうですね。そういった経験を踏まえ、やはり専門家がきちんと事前対策に絡んで、しっかりと検討できる社会にしていかないといけないという思いが強くなりました。また、弁護士を身近な存在にして、相談できる窓口を広げていこうということで、様々な取り組みをしています。

眞鍋:西村さんのスーツにつけていらっしゃるピンバッジにも「終活お話会」と書いてありますね。そういうイベントもやってらっしゃるのですか?

西村:私らが毎月連続で無料開催しているイベントがあります。10回ほど開催しているのですが、地元の終活を語り合えるコミュニティを作りたいという思いで始めたものです。

眞鍋:終活をコミュニティで行うイメージがなかったので、驚きました。

西村:そうですね。何からやっていいかわからない方も多いですし、実は他の人がどういうことをやっているのかが気になっている人も多いのです。

眞鍋:確かに。少し気になります。

西村:お隣の人はどんなことをやっているのかというイメージで、いろいろな情報交換ができる場になっています。

眞鍋:終活の話を気軽にできる仲間を作れるということですね。

西村:また、意図していたものではなかったのですが、ある方から「毎月1回コミュニティで集まることで、ある意味見守り機能もあるのではないか」と言われました。そういう意味ではすごく地域に貢献できるイベントができているのかなと思っております。

眞鍋:なるほど。参加している方が最近どうしてるのかお互いにキャッチアップできるのですね。地方のコミュニティだからこそ、やはりそういうのが大事になってきますよね。

西村:そうですね。そういった意味では非常にいいコミュニティができていると思ってます。

眞鍋:終活以外にも情報交換する場にもなっているわけですね。終活をもっと身近にするために、今後取り組みたいことはありますか?

西村:弁護士がサポートするときに、一番中心になるのは遺言のサポートになります。ただ、遺言は法律上の縛りがありますので、あまり自由に書けないのです。そのため、一個一個の手続きをサポートし、その方や遺言の対象の方々が良い人生を送るため、人生の質の向上ということに寄り添っていきたいです。その質の向上のために、自分の人生を考えていく伴奏支援というものをしていきたいと思っています。今はまだ問題も多くすぐにはできないのですが、そういったところを支援できる弁護士になっていけるように今から考えていきます。

眞鍋:エンディングノートで自分の考えを整理することで、遺言の叩き台みたいなものにもなりますよね。

西村:そうですね。やはりエンディングノートで整理していく中で、自分が最終的に人生の最期の選択を輝かせるためのご支援ができるのかなと思いますので、価値あるサービスが提供できるようにしていきたいです。

眞鍋:私は20代の頃に書こうとして、書いてる間にものすごい泣いて、どうしていいかわからずに終わったことがありました。弁護士さんから書き方を教えてもらうことで、冷静に書けそうな気がしてきました。

西村:そうですね。そういうサポートができればいいなと考えております。

眞鍋:私も年齢的に半ばに差し掛かったぐらいまで来たかなと思うので、死を考えること、生を考えることをしていきたいです。

西村:ぜひやってみてください。