12月23日(月)配信 にじこどもホスピス 代表 能勢義雄

1970年生まれ。1992年に電気工事業で独立するも、2014年に病気で引退。2015年の入院中に「こどもホスピス」の必要性を痛感し、2022年に事務局を開設、翌年「にじこどもホスピス」を立ち上げる。緩和ケアや家族全体の支援、旅行手配や医療連携など、すべて無償で提供。子どもたちとその家族のため支援を続けている。
笠井:こどもホスピスということで、私たちは長く番組をやっているんですけど、初めての業種のゲストでいらっしゃいます。ホスピスということは、命に限りのあるお子さんのケアをされていると考えてよろしいですか。
能勢:そういうわけではなく、全てのお子様で悩んでいらっしゃる親御さんをうちの施設で受け入れてます。専門家のカウンセリング等を受けてもらったりとか、悩みを聞いたり、解消できるものは解消してもらう。うちの職員で協力させていただくことも含めてのこどもホスピスです。大人のホスピスというと、癌などで余命宣告を受けた方がいるところっていうイメージですけども、全く違いまして、明るく楽しく遊んで学んだりするような施設ですね。
笠井:対象になるお子さんとご家族は、病気だけでなく、生活困窮ですとか、そういった困りごとを持つご家庭も含め、非常に広くとらえていらっしゃるんですね。具体的にはどんなことをされてるんですか?

能勢:今現在ですと、緩和ケアではないですけども、お願いして来ていただいている医師の方とか、うちで雇用している看護師、保育士が常にいる場所ということで、普通の幼稚園には通えないお子さんでも来れようにしています。親御さんも一緒に来て、同じような思いを持ってる子がいる方と、お話ができるような場所も提供しています。親御さんの悩みもあるし、お子さんは病院の中だけでは学ぶことも出来ないし、遊ぶことも出来ない。まして病院の中だと外に出れない。それでしたら、うちのこどもホスピスには常に保育士、看護師がついてますので、外や公園で遊んだりなどもできるし、万が一の時は近くに開業医さんがいますので、いつでも駆けつけてくれる状態にしてます。
笠井:病弱なお子さんでも利用できるということですね。場所はどこにあるんですか?
能勢:埼玉県北葛飾郡松伏町というところでやっております。
笠井:経歴を拝見すると、電気工事のお仕事をされていたんですね。そこからこのこどもホスピスへ。どういった経緯があったんですか?
能勢:僕が2014年に癌になりまして。一週間程度入院して手術したんですけども、大きな病院で、小児病棟があったんですよ。どよんとした雰囲気で、笑いもないし、通常のお子さんでしたらきゃっきゃしてるのは当たり前だと思うんですけども、全然していなくて。ちょっと疑問に思い調べたのですが、ケアをする施設が何にもないんですよね、子どもって。大人のホスピスって、海の方のあったかいところとかに緩和ケアとかをしてくれる施設がいっぱいありますけど、子どもに関してはなぜだか一個もない。国としては、子どもは宝と謳っているのに、なぜないんだろうなと思いながら、数年して、なければ自分でやってしまえばいいのかなって。電気の方は廃業して、ホスピスの方に転換していきました。
笠井:こどもホスピスを作るための、規制とか、ルール、制度。そういったものはどう勉強していったんですか?
能勢:こども家庭庁に聞いたんですが、そういう制度はありませんとのことでした。
笠井:子どものホスピスを作るための制度がない。
能勢:つまりルールがない、はっきりとそうおっしゃったんで、じゃあ自由にやっていいんですかと。
笠井:前例がないわけですね。そうなると、当然その設立に必要な補助金とか助成金は?
能勢:一切ありません。
笠井:全く公的な資金がない中で施設を作られたと。全部持ち出しじゃないですか。
能勢:僕の100%持ち出しで。一応、今年施設を建てるということでクラウドファンディングをしたのですが、なかなか集まらず、数万円という結果になってしまいました。
笠井:実際にこどもホスピスをオープンしたのが去年ですか。今どれくらいの方が利用されていらっしゃいますか?
能勢:一年やった中で、まだ26組ですかね。
笠井:皆さんの反応はいかがですか?
能勢:リピートしていただいて、今まで笑ったことないお子さんがうちに来て笑ってくれると。親御さんがすごく明るく言ってくれるんですよ。親御さんもお子さんもすごく喜んでいただいてるんで、今後、手探りではあるんですけども、改善してやっていきたいなと思います。
笠井:色々無償で提供されてるという話を聞きまして、どこまでが無償なんでしょうか。基本的な利用料はかかるわけですよね?
能勢:ほぼ99%を無償で提供しています。
笠井:先ほど色々な手配をされるというお話がありましたけども、看護とか。当然そこには実費はかかりますよね?
能勢:ほとんどかからないと思っていただいて大丈夫です。旅行に行きたいっていう方でも、うちの方で負担をさせていただきますので。旅行先で何か食べたいっていうものに関して負担はしてもらっていますが、旅行費はうちの方で負担しています。
笠井:素晴らしいですし、すごいと思うんですが、一応この番組はビジネス番組なんですけれども、その形態でビジネスとして運営は成立してますか?
能勢:まず成立しないと思ってるのですが、お子さんの病気でお金がかかって、国はある程度は出してくれますけども、親御さんの持ち出しってかなりあるんですよね。その中で、うちの施設に来たいと思っても、お金かかるんじゃ来れないなっていう人がたくさんいるっていうこともありまして、99%無償で提供させていただいています。

笠井:スポンサーとかはついてるんですか?
能勢:まだついてないんですよ。
笠井:いやもう、じゃあお金をどうやって工面するかってことが最大のテーマじゃございませんか?
能勢:そうですね、どこの施設も多分お金を集めることに対してすごく困ってる最中だと思っているのですが、たまたま僕は今までの貯蓄がありましたので、それで今のところは運営できてます。
笠井:初めてのことにもチャレンジし始めるんですよね?
能勢:他のこどもホスピスさんではやっていないことなんですが、施設があって、お子さんを受け入れる準備ができてます。でも常に子どもが来てるわけではないので、子ども食堂をやろうかなと思っています。子ども食堂は結構あると思うんですが、うちみたいに職員がいるところ、看護師さんがいて、保育士さんがいて、学校帰りに来ていただいたら勉強を見ることができ、宿題もそこでできる。せっかく施設が空いてるので活用して、食事とかも無償で提供したいなと思ってます。
笠井:いやもう、能勢さん。底なしにいい方ですね。だってお子さんたち、ご家族のために、そこまでやってあげたい、やらなきゃという使命感は、どこから生まれてますか?
能勢:いや、全く使命感はないです。ただ単に、何かをしてあげて、親御さんが笑顔で帰っていただいて「ありがとう」その一言があれば、僕はもうそれで満足なんで。
笠井:とても大変なことをされてるのに、何か当たり前のようにお話されてるのが、もう強く胸を打たれました。
能勢:当たり前のことだと思うんですよ。昔であれば、困ってる人を助けてあげる、道で転んだ人がいれば手を貸してあげるっていうのは当たり前でした。今はそういうことはなるべく避けていきますよね。昔のいいところだけを復活させていきたいなと思います。このままやっていける自信はないんですけども、やっていかなきゃならないなと思っています。
