5月20日(月)配信 経済ジャーナリスト 荻原博子
1954年長野県生まれ。経済事務所勤務後、1982年からフリーの経済ジャーナリストとして、新聞・経済誌などに連載。女性誌「hanako」(マガジンハウス)で女性向けの経済・マネー記事を連載。難しい経済やお金の仕組みを、生活に根ざしてわかりやすく解説し、以降、経済だけでなくマネー分野の記事も数多く手がけ、ビジネスマンから主婦に至るまで幅広い層に支持されている。著著に『老後の心配はおやめなさい―親と自分の「生活戦略」』(新潮社)『年金だけで十分暮らせます』(PHP研究所)など多数。
笠井:様々なメディアで経済、お金の仕組みを分かりやすく解説されている荻原さん。これだけ経済に詳しくていらっしゃるのに、大学は文学部。
荻原:私ね、本当は文学系に行ってシナリオ作家になりたかったんですよ。でも就職で食べていけないじゃん。だから、とにかく書くことで食べていこうと思って就職したのが、経済評論家の先生の事務所だったんです。でも、なんかそれって違うよな、自分の書きたいことを書きたいよなと思って。一時はルポライターになろうと思って、挫折して。
笠井:そして、また経済の道に戻ってきた。
荻原:一番得意分野だからね。で、「hanako」が当たったんですよ。女性で署名で経済記事を書いてる人っていなかったので、珍しかったんでしょうね。「hanako」で連載をするようになって、びっくりしたんですけど、おじさんたちは「これは将来的にはいかがなものか」みたいな終わり方でも納得してくれる。ところが女の人は「じゃ、一体どうすりゃいいの?」って、突き詰めてくる。それで、ちゃんとお金のことを書くんだったら、こうしましょうっていう提案をしなきゃいけないと、10年間「hanako」で鍛えられたんです。
笠井:物事を提起するだけじゃなくて、解決するまでいかなきゃいけない。荻原さんの『年金だけで十分暮らせます』って本も、お金の話かと思ったら、介護のケアマネは何が良いかみたいな話まで入ってて、これ生活の本じゃんと思いましたよ。
荻原:そうなんですよ。生活に根付かないとダメなんだなって、その時に私はすごく実感したんです。
笠井:自分の仕事はこれでいいのかと疑問に思った時に、昭和時代は石の上にも三年とか言ったじゃないですか。令和時代の転職はどんなふうに見てますか?
荻原:私は自分が好きなことをやらなきゃいけないと思う。好きなことをやってると人間って伸びるんですよ。
笠井:どうしても将来性は?とか考えがちですけれど、ベースとして好きか好きじゃないかはとても大きいと思います。
荻原:だって、AIの時代になって、10年後に世界の仕事が半分なくなるって言われてますよね。仕事の将来性なんかわかんないですよ。だから、そんなことに時間を費やすよりは、自分は何が好きなの?って、自分に問いかけてみるのが1番いいと思う。少し遠回りしてもいいんですよ。少しでもそっちに寄っていく。そうするといつか、道が開けることもあると思う。
笠井:好きなことをやりたいと言っても、フリーの経済ジャーナリストってだけでも大変なのに、そこに女性という属性がついた時、困難はありませんでしたか?
荻原:それは全然違うと思う。なぜかというと、私1人しかいなかったら有利じゃないですか。
笠井:そうか、経済ジャーナリストには女性がいなかった。むしろ、誰もやってないから価値が上がってると。
荻原:今でもそうですよ、男性社会だから。確かに大変なんだけど、でもそれを下手に取るってこともできるんじゃないかと思うんです。
笠井:女性が仕事、ビジネスで独立していく上での留意点はありますか?
荻原:経済だけはしっかりしときましょう。自分の財布だけは自分でなんとか守れるようにしときましょう。食いっぱぐれないものを一つ押さえ、あとやっぱり自分の好きなことやりましょう。
笠井:さて、番組ではいつも3つのキーワードをお聞きしてます。第1のキーワードはモチベーション。荻原さんの仕事のモチベーションはなんでしょうか。
荻原:私は人の役に立ちたいと思うんですよ。私が書いたものを読んで、家計がちょっと楽になったとか、貯金がいっぱいできたとか、そういう風になるとすごく嬉しいなと思うんです。
笠井:荻原さんの本で面白いのは、具体的であるということ。これはダメ、あれはダメと、思い切って色々なものにダメ出しをしてる。ここがわかりやすい。本読んでるとね、役に立ちたいってことを突き詰めてるなと思いましたよ。
荻原:私は信念を持って言ってますからね。それが仕事だと思ってるし、それでお金もらってると思うから。ちゃんとお金もらってるだけのことをしっかり言わないと、と思ってますね。
笠井:続いて、第2のキーワードは信念。荻原さんの仕事の信念とは。
荻原:私あんまり安易に、人の言うこと信じちゃいけないと思うんですよ。誰かを頼りにしたり、誰かが言ってるからこうだって思ったり。1番いけないのは、国がこう言うから、それは正しいでしょって思うこと。世の中これだけ混沌としてると、何が正しいのか、何が正しくないのかっていうのは、自分で取捨選択するしかないんですよ。
笠井:自分で取捨選択するために人の指導を仰ぎたいんじゃないですか?
荻原:指導を仰ぐんじゃなくて、人の意見を聞く。たくさんの人の意見を聞いて、自分を信じて、自分でチョイスしてく。これが大切だと思う。それで、自分が本当のことだと思ったらそれを迷わず言うことが大切なんじゃないかなって、仕事柄思うんですよね。
笠井:この時代、自分の芯というものをちゃんと持ってることが大事なんだと。それに肉付けしていく情報としていろんなものがあるんだと。
荻原:自分の価値観を持つってことが大事。
笠井:第3のキーワード、未来へのビジョン。これからやりたいこと、挑戦などなど、どんなものをお持ちでしょうか。
荻原:今の目先は、保険証廃止反対。日本の保険制度って60年かけて培ってきたものなんですよ。マイナ保険証はどうですか、あの不具合の多さ、トラブルの多さ。しかも更新が必要で役所まで行かなきゃいけない。そうなると多分若い人は保険制度から抜け落ちていっちゃうんですよ。制度を支えてくれる人がいなくなる。だからね、とにかくね、保険証だけは残せと。
笠井:未来のビジョンって聞いた時に、ご自分の未来のビジョンを話す方がほとんどですけども、荻原さんはこの国のために、皆さんのための未来のビジョンを話してる。人のため、役に立ちたいっていうのは、そういうことなんでしょうね。
荻原:あと20年もしたら終わっちゃうわけじゃないですか、自分の人生。でも保険証は小孫が困るじゃないですか。
笠井:今何が問題か、今どうしたいかが大事なのね。
荻原:今楽しくて、どうすれば心地いいかとかね。私は今の延長に未来があると思ってるんです。だから、楽しい人生を送れれば、その人の人生は成功。