8月4日配信回
2025.08.04

8月4日(月)配信 SMILE 代表 岡野顕子

略歴

日本大学の農獣医学部獣医学科を卒業し、獣医師免許を取得。ダクタリ動物病院京都医療センターに勤務。副院長や事務局長、院長を務めた後、2019年にSMILEを設立。国家資格であるキャリアコンサルタントや国際EAPコンサルタントなど、様々な資格を取得し、現在に至る。

笠井:SMILEという会社は、どういう会社でしょうか?

岡野:動物病院で働く方のキャリア支援をしている会社です。

笠井:動物病院で働く人々をサポートするということですか?

岡野:そうですね。動物病院で働く人をサポートするのが主な事業になります。

笠井:動物病院向けのコンサル会社ということですが、珍しいですね。経歴を拝見しますと、日本大学の農獣医学部獣医学科卒業、そして獣医師免許を取得されています。ダクタリ動物病院京都医療センターに勤務されて、副院長や事務局長、院長も勤められたということですが、2019年にSMILEを設立されています。その後、国家資格であるキャリアコンサルタントやる国際EAPのコンサルタントなど、様々な資格を取得され、今ではシンポジウムの司会進行や講師なども務めていらっしゃるのですね。

岡野:そうですね。研修の講師などもさせてもらっています。

笠井:そもそもは動物病院で働いていらっしゃったということですが、なぜ動物病院の支援事業の方に進まれたのでしょうか?

岡野:約18年間動物病院で勤務していましたが、、30歳から副院長などをさせていただき、獣医師の技術を磨くというよりも、やはり人を育てるということにすごく苦労をしました。周りの獣医師さんと話していても、「どうやってスタッフを育てたらいいかな」という話が多く、院長を経験し「何かできることがないかな」と考え、キャリアコンサルタントの資格を取得しようと思いました。

笠井:そうだったのですね。動物病院で働く皆さんの離職率はどのくらいでしょうか?

岡野:今、どこの業界も離職率は高くなっていると思うのですが、規模的には10人以下の病院さんも多いので、3年以内だったら3〜4割ぐらいにはなってきます。

笠井:人数が少ないと辞めた時のダメージが大きいですよね。

岡野:そうなんです。

笠井:実際に副院長や院長を務めていた時にどのような課題に直面しましたか?

岡野:そうですね。やはりスタッフ一人一人が目標を持って、自発的に仕事を愉しんで、生き生き働くことができるかが課題でした。スタッフが疲弊していくのを目の当たりにしつつ、組織としては「こっち向くんだぞ」と無理やり引っ張っていく側面もありました。

笠井:動物病院で働いてる皆さんは「動物が好きな方が多く、仕事も楽しくしているのかな」と思っていたのですが、違うのでしょうか?

岡野:「動物が好き」という思いが強すぎるので、バーンアウトする方が多いですね。

笠井:バーンアウトとはどういう意味でしょうか?

岡野:燃え尽き症候群のことです。献身的に尽くしてしまい、どんどん疲労がたまってしまう方が多いですね。

笠井:そういう方たちをキャリアコンサルタントとして支援すると、変わっていきますか?

岡野:変わりますね。疲れている方にキャリア支援の勉強とか理論とかお伝えしても響きにくいですし、「目標を持って頑張れ」と言っても、なかなか頑張れないので、最近は「レジリエンスの視点から、自分を整えることをまずやりませんか」と寄り添う形でキャリア支援をスタートさせることが多いですね。

笠井:レジリエンスといいますと、職場でのストレスや対人関係の悩みなど、さまざまな困難に直面した時に立ち直るような支援でしょうか?

岡野:そうです。まず自分が元気でないと、困難にも立ち向かえないですよね。スタッフの方は、動物好きの方が多いので、自分たちが診てた子が亡くなると精神的にダメージを受けてしまいます。しかし、そこでガタガタと崩れてしまうと「もう無理です」となってしまいますので、やはりレジリエンス力というのは必要かなと思っています。

笠井:そうなのですね。仕事のこだわりを教えてください。

岡野:一番は本物でありたいと思っています。

笠井:具体的にはどういうことでしょうか?

岡野:私はいろんな資格は持ってるのですが「単に知識だけではなく、ちゃんとした支援ができるようになりたい」と思っています。私自身、獣医師でもあり、キャリアコンサルタントでもあるので「現場に寄り添いながら、形だけじゃない支援ができたらいいな」と考えています。

笠井:つまり、普通のキャリアコンサルタントよりも、動物業界に非常に特化している経験から「動物病院の悩みなら、私にお任せください」というところですよね。

岡野:そう言いたいですね。

笠井:ぜひ、言ってください。ただ病院によって、求められることが違うのではないでしょうか?

岡野:そうですね。院長先生のカラーもありますし、集まる人も変わってきますので、病院によって課題も違ってきますね。コンサルティングに入るときはほとんどオーダーメイドでさせてもらっています。

笠井:この仕事をしている中でのターニングポイントとなったエピソードは何かありますでしょうか。

岡野:正直に言うと、院長を経験させていただいたことが、一番の転機だとは思うのですが、根本はやはり母との関係性が大きいのかなと思います。

笠井:それはどういうことでしょうか?

岡野:母は先天性ミオパチーという筋ジストロフィーの一種の病気をずっと抱えていました。2年前に他界したのですが、先天性ミオパチーで子どもを産んだという症例があまりなかった中で「社会とのつながりも持ちたい」という思いで働いていました。そのため、働くことのベースは「母から教えてもらったな」と思いますね。

笠井:いろいろな悩みや困難を抱えている中で働くという意味では、キャリアコンサルタントもそういう方と向き合うお仕事ですよね。ある意味人生そのものではないでしょうか?

岡野:そうですね。「ライフキャリアをより良くするためにワークキャリアがある」というスタンスは絶対変わらないと思います。

笠井:生きることと働くことのバランスとどう向き合うかということが根本ですよね。

仕事をしていて楽しい瞬間はどんな時ですか?

岡野:キャリア支援をしている時は、「少し目標が見つかりました」「前向きになれそうです」と言っていただけた時が嬉しいですね。

笠井:そうですか。会社としての理念を教えてください。

岡野:会社の理念イコール、私の理念になるのですが「地球の尊厳とともに、人として笑顔で生きる社会を創る」ということを目標にします。「笑える」ということがすごく大事だなと思っているため、「心の底から笑ってもらえるようになるサポート」をしていきたいです。

笠井:動物病院で疲弊していて、笑顔がなくなっている方もいらっしゃいますか?

岡野:可愛い動物たちの顔を見ると笑顔になりますが、やはり疲弊している方もいます。

笠井:そうですか。可愛すぎて、燃え尽き症候群になってしまうのは難しい問題ですよね。

岡野:そうなんです。

笠井:今後、新しく開拓していきたい分野はありますでしょうか?

岡野:事業としてはいろいろ考えていますが、「やはり仕事を愉しんでもらいたい」という想いがあるため、レジリエンスの視点を普及していきたいと考えています。働いている人だけではなく、大学や教育の分野でも、お伝えする機会があればいいなと思っています。

笠井:そうですか。うちにも、猫が3匹いますけど、ペットは家族です。動物病院は我々にとって大事な存在になっていますので、これからもその動物病院で働く皆さんの支援をよろしくお願いします。

岡野:頑張ります。