1月13日(月)配信 株式会社ニュートリサポート 代表取締役 小柳津広志

1953年生まれ、静岡県出身。東京大学で農学博士を取得後、富山大学や東京大学で助教授・教授職を歴任。2016年に東京大学名誉教授に就任。定年退職をきっかけに株式会社ニュートリサポートを創業、代表取締役を務める。腸内細菌叢に目をつけ、コントロールする方法を確立。これらの研究から高齢者の病気やアレルギーの改善につながる「長沢オリゴ」を開発し、販売している。
笠井:小柳津さんは皆さんから先生と呼ばれることが長かったと思うんですよ、東大の名誉教授も歴任されていまして。先生、今おいくつでいらっしゃいますか?
小柳津:71歳です。
笠井:71歳ですか。とても健康そうでいらっしゃいます。株式会社ニュートリサポート、変わった会社名なんですが、どんな会社なんですか?
小柳津:ニュートリサポートというのは。ニュートリエント、つまり栄養をサポートするということで、良い食品を栄養としてサポートして、高齢者の健康を改善するという意味です。
笠井:先生の経歴を拝見しますと、東大農学部を卒業された後、大学院、富山大学を経て東大農学部に戻られて教授になられた。東京大学生物生産研究センターでも教授をされて、東大の名誉教授になられて定年退職された。農学部で様々な微生物の研究をされてきて、これは今回のお仕事とどう関係してるんでしょうか?

小柳津:私は東京大学では微生物学を研究していたんです。微生物学の知識はあったんですけども、実は料理も得意だったので、レシピ本を出してるんです。
笠井:小柳津先生がレストランを開いたのは、お料理が得意だったからですか?
小柳津:料理が得意だったので、高齢者の栄養をサポートして健康を改善したいということを考えたわけです。
笠井:つまり、研究から実践の方に向かったわけですね。どこにどんなレストランを?
小柳津:横須賀市の長沢という地域で減塩レストランを作りました。
笠井:塩が減る、減塩。なんか東大名誉教授がレストラン経営って、三谷幸喜のドラマみたいな設定ですけれども、みんな珍しがりませんでしたか?
小柳津:お年寄りに向いた食べ物だったので、お客さんがたくさん来て、平均年齢が70歳くらいのお客さんでした。
笠井:大成功だったと。そのレストラン経営をする中で、現在のお仕事に入ってくるんですけども、これはどうなっていったのですか?
小柳津:レストランに来ている高齢のお客さん、糖尿病とか認知症の方もいらっしゃるし、よくあるのは喘息とか肌が痒くなる老人性乾皮症というもので、いろんな病気があるんですね。
笠井:高齢者は皆さん何らかの不具合を訴えていらっしゃるそうですね。そのことに気づいたということですね。
小柳津:レストランだけでは少し物足りないということに気づいたわけです。私の微生物学の知識が生かされるのではないかという風に考えました。
笠井:どんなふうに有効になってきたんですか?
小柳津:腸内微生物で、例えばアレルギーが治るっていうのは分かっていたわけですね。それはもう30年も40年も前に動物実験で確かめられていて。じゃあ、そのやり方でアレルギーを治してあげれば、喘息や老人性乾皮症という痒みが出るのを治せるんじゃないかということで、すぐにこのお年寄りの人たちに効果が期待できる食品を食べてもらいました。
笠井:つまり、体を良くする微生物が混じった食品ってことですか?
小柳津:混じったっていうか、腸内に酪酸菌と呼ばれている細菌がいるんですね。それを増やしてやるとアレルギーが治るということが昔から分かっていたので、それを増やす食品を食べてもらったわけです。私が使ったものはフラクトオリゴ糖という糖類ですけども、私はそれを使ってアレルギーの治療を、人間でやってみようと試したわけです。でも食品だから別に人体実験というほどのことではありません。
笠井:副作用はないわけですね。で、その酪酸菌を増やし、活性化させる食品ができたわけですね。
小柳津:すぐにできました。それを何百人、何千人ってテストしたわけですね。そうすると、90%くらいの方が1日でアレルギーが改善するっていうことがわかったんです。
笠井:今はそのレストランはどうなってるんですか?
小柳津:レストランは社員に任せて、カフェ500というカフェを運営しております。地元の方、高齢者の方に来てもらってます。元々レストランも500円でたっぷり食べられるっていう概念で作ったんです。

笠井:この番組はビジネス番組でありまして。500円でたっぷり食べられるレストランというのは、ビジネス的には成立してましたか?
小柳津:成立してないです。
笠井:そうですか、ただ、それでも続けられた理由があると思うんですよ。
小柳津:高齢者の悩んでる病気を改善しようということで、新たなモチベーションができたので。方向が変わったわけですね。
笠井:たくさんのお客さんが来たことによって、新しい気づきがあったわけですよね。みんな病気を持っていると。そこには意味がありましたね。
小柳津:ものすごく意味がありましたね。
笠井:体感されて、研究といったものに対して、発見というか新しい考え方を得たのではありませんか?
小柳津:そうです。まさにそれをやらなければ、病気の治し方、アレルギーの治し方が、何もわからなかったです。一般の人たち、高齢者を中心としたその人たちと、親しくなれたのが非常に重要ですね。研究室では何もできないです。
笠井:外に出たからこそ、お年寄りと接したからこそわかった、前に進めたという。とてつもないチャレンジでありながら、プレゼントだったんですね。
小柳津:そうですね、私に対するプレゼントですね。高齢者の方々に感謝しなきゃいけないと思います。
笠井:会社の規模はどのような感じでやっていらっしゃるんですか?
小柳津:今、自社では14名の社員がいます。
笠井:結構いらっしゃいますね。レストラン的には非常に厳しい経営状態ではありましたけども、ニュートリサポートの方は結果が出てるってことですね。
小柳津:非常に順調に毎年増収増益という形になっております。
笠井:その開発された長沢オリゴという食品がヒットしてるってことですね。それを中心に先生がやってきたことが、高齢者の皆さんの幸せと健康につながってるということですね。
小柳津:非常に感謝していただいています。喜びは大きいですね、直接感謝されるわけですから。
笠井:最後になりますが、未来のビジョンはどんなことを考えていらっしゃいますか?
小柳津:とにかくお客様の病気を治す方法を作るということですね。
笠井:具体的にはどんな病気を治していきたいと考えていらっしゃいます?
小柳津:最終的な究極の目標なんですけども、無病、病気のない状態ですね、無病を維持するやり方。それから、脳機能を維持するやり方。これを開発して国民の皆様に提示して実行してもらうという、そういう方法があるんだということを示したいと思います。その中にはいろんな病気の予防、がんの予防とかも含まれます。
笠井:つまり、健康寿命を伸ばしていくということですよね。先生は体感されて、ますます研究と実践を進めていらっしゃるわけですね。見ていて幸せそうでもあります。
小柳津:今が人生の中で一番幸せな時期だと思います、70歳を過ぎてからですね。
笠井:私もそうありたいと思っております。そのためには、自分で動いていかなきゃいけないんだなってこともよくわかりました。
