8月5日(月)配信 三陽建設株式会社 代表取締役 阪本仁彦
1969年三重県伊賀市生まれ。高校を卒業後、三陽建設株式会社に入社。2005年に本社建築部課長、2009年本社営業部課長を経て、2012年専務取締役に就任。そして2018年には、5代目として代表取締役に就任。現在、ホールディングス化や労働環境の改善、若手の育成に取り組む。
笠井:三陽建設は、建築会社ということになると思いますが、主にどんなお仕事になりますか?
阪本:建築が主体でして、福祉関係の事業と商業施設関係と、あと工場などの生産施設、その三本柱で新築、リフォームをさせていただいております。
笠井:歴史ある会社のようですね。
阪本:前身の工務店が100年。その後三陽建設という株式会社になりまして、今年で70歳を迎えます。
笠井:阪本さんは何代目の社長さんですか?
阪本:5代目になります。
笠井:今の会社との出会いは?
阪本:単純に求人広告を見てですね。私も出身が三重県だったんで、ほんとに偶然というか、高校3年生の時にご紹介いただいて、そこからもうずっと。
笠井:高卒でこの大きな会社の社長になれたというのは、どんなところに要因があると思いますか?
阪本:本当に自分でもわからないです。
笠井:一生懸命だったと?
阪本:それはあるかもしれませんね。
笠井:どの辺りから自分がこの会社を引っ張っていこうという意識を持ちましたか?
阪本:役員になった時からですね。それまではそんなに経営のことも知らずに、自分の現場で目の前の仕事を頑張っていただけなので。
笠井:社長さんになったのは何年ぐらい前ですか?
阪本:代表になったのは5年前です。
笠井:現社長としての阪本さんのこだわりや、社長になって始めた改革はなんでしょうか?
阪本:うちは小さな地方の建設会社なので、まず従業員を大切にしようと。社員さんが働きやすい環境を作らなあかんということで、就業規則とか、早め早めに働きやすい環境を作って、社員さんファーストでいい関係を作って、お客様の仕事もいいものを作ろうということを進めました。
笠井:それはやはり働き方改革法に押されてやったんですか?
阪本:それより前です。この業界に入ってくる子は少なかったので。建築はやっぱり休みがないとか、キツいとか、ブラックなイメージを変えていかないとダメだったのです。微力ながら徐々に変えていったことで、今は結構若い子が多いです。
笠井:ホームページを拝見しましたら、社員さんたちのインタビューで皆さん楽しそうなんですよ。実際社内の雰囲気ってどんな感じでしょうか。
阪本:建設会社って結構年齢層が高いことが多いのですが、若手が多いので、良い意味でがいがいわやわやと活気があります。
笠井:それってすごい大事なことだと思いますが、実際従業員の年齢層のバランスはどうなってますか?
阪本:三角形で、20代、30代が多くて、40代、50代が少ないです。
笠井:それって理想的ですよ。今、逆三角形の会社が多いですよね。バブルの頃はたくさん採っていたみたいな。どうしてそんな理想的なバランスになっているのでしょうか?
阪本:建設不況の時から採用活動を始めたので、仕事のなかった時代もありましたが、採用だけは続けていました。先代の社長の時から、年齢層を見ると10年後危ないなということで早めに始めていただいたのですが、それがたまたま結果として良かったという。
笠井:でも、なかなかそれができる会社って多くないですよ、気づいてみたらっていうところが多くて。もう一方で、三陽建設はホールディングス化をやってらっしゃるイメージがありますが、会社の規模を大きくしたいということですか?
阪本:そうではなくて、同族経営じゃなかったもので、株が分散していました。やっぱり同族じゃない方が継続して経営する時に、株がばらけてるとやりにくくなるので、役員持株会、社員持株会ということで株を集約してホールディングスにしました。まずは株の会社を作って、そこから、若手が多かったんで、いろんな事業に行きたいと思った時に、そこにぶら下がった会社ができるように、準備をしてるところです。
笠井:一つのキーワードとして分社化が上がっていたんですが、あれはどういうことですか?
阪本:若手の中で俺は社長がしたいなっていう子が出てきた時に、会社が一つだと一人しか社長できないですが、うちは分社化できますよってアピールさせていただいてるんで、社長が三人、四人出て来てもいいように準備をしてます。
笠井:三陽建設をいくつかの会社に分けると、それだけポストができるわけですよね。社長も部長も。そうやって社員さんたちのやる気を引き出すことを狙っているんですか?
阪本:今地方の会社さん、ちゃんと事業されててしっかりした会社でも結構後継者がいないのですが、我々の若手の中からやりたい子がいればそこの社長になっていただいて、ホールディングスの中の一個の会社にするような。M&Aで会社を大きくする目的じゃなくて、地元、地方を守っていきたいなと。
笠井:地元の活性化。そういうホールディングス化があるのですね。そうやって、一つひとつの仕事を分社化して自分たちの会社にまとめることによって、トップの人とか責任ある人を増やしていくと。それはやっぱり若手のためですか?
阪本:今後ですけどね、育った先でそういう道もあるよって言えるように道を作っておかないと。
笠井:三陽建設の企業理念は?
阪本:行動指針っていうのがありまして。「逃げるな、隠すな、嘘つくな」というのがあるんですけど、これを常に頭に入れて動けよ、としています。
笠井:我々マスコミからすると、「逃げるな、隠すな、嘘つくな」って、会社の危機管理の三要素ってよく言われるんですよ。それと一緒なんです。要するに、不祥事が起きた時に、マスコミに対して「逃げちゃいけない、隠しちゃいけない、嘘ついちゃいけない」ってよく言われるんです。それを会社の行動指針にしてらっしゃると。どうしてでしょうか?
阪本:先代の社長から、若い子が多いんで、迷うことも当然あると思うので、簡単なフレーズで作った方がいいなって思って、これをうちで毎日唱和するようにしてるんです。
笠井:特に建築会社は、耐震偽装など様々なトラブルがニュースになってる。なので、この「逃げるな、隠すな、嘘つくな」は素晴らしい着眼点だと思います。毎日それを唱和しているということは、若い人たちに根付かせていると。
阪本:浸透してくれてると思います。
笠井:最後になりますけれども、未来へのビジョン。これからどんな会社にしていきたいか、どんなことを考えてますか?
阪本:地方の建設会社として、社員の環境をしっかり整えて、地方から元気に発信できる会社を続けていきたいなと思っております。