9月2日(月)配信 株式会社プリサージュ 代表取締役社長 佐野昭子
日本航空客室乗務員として約15年間国際線乗務(JALwaysを含む)の後、JALアカデミー講師、旅行専門学校講師を経て、2002年人材育成会社「プリサージュ」創業、2018年に法人化。客室乗務員として10万人以上の接客を担当してきた経験と、剣道範士八段の実父から学んだ「人間力」により、組織で必要とされる人間には共通の“おもてなし資質”があることを発見し、ホスピタリティ向上をベースとした「カリスマ人間力」の研修プログラムを体系化。千葉商科大学では客員講師を務める。加えて、人間行動学からの「価値観ワーク」も取り入れた研修も行う。新入社員から管理職まで、ありとあらゆるレベル、職種に向けて、全国各地で研修、講演をしてきた20年の実績を持つ。2010年より千葉商科大学では客員講師を務める。
笠井:プリサージュはどういう会社になりますか?
佐野:プリサージュは、おもてなしの心、ホスピタリティをベースに、現代人に失われたコミュニケーションを取り戻すことを目的とした研修・講演を、政府機関から大学、一般企業まで様々な業種の方々にお仕事をさせていただいています。
笠井:佐野さんは元々JALの客室乗務員だったと。国際線でもう10何年と働いていらっしゃって、辞められたのは起業するためですか?
佐野:いいえ、JALをやめたのは子育てに入ったからです。その後たまたまJALアカデミーという、JALのOGがマナー講師をしている会社があるのですが、その募集があったので応募して、研修・教育業に目覚めました。
笠井:お客さんをもてなすところから、もてなす人を育てるという。そこからホスピタリティ旅行専門学校の講師なども務められ、今回のプリサージュという会社を立ち上げた。どうして起業されたんですか?
佐野:JALアカデミーの内容では物足りなくなってきて。それで、自分でやった方がいいと思って起業すると決めました。私、元々コミュニケーションが下手だったんです。人間関係もあんまり良くなくて、つまらなかったのです。でも、これではダメだと思って、勉強して実行して実践していくと、コミュニケーションがうまくなって、周りも良くなってきて、楽しい人生になってきたと気づいたんです。これを、コミュニケーションが上手じゃないと思っている方々にお知らせして、幸せになってくれたら嬉しいなと思って、そこからですね。
笠井:非常に難しい質問なんですが、コミュニケーションが上手になるコツがあるとすれば、どんなことだと思いますか?
佐野:自分と他人は違うということに気づくことです。要するに、今まで生きてきたものが自分なんですよね。人間は、自分が正しいと思っていることを言うし、やるんです。自分と相手が正しいと思っていることがもし違ったら、そこで問題が起きてしまうのですが、「そういう考え方もあるんだね」というように考えを切り替えれば、相手の立場に立つこともできるので、その辺が難しいですが重要かなと思っています。
笠井:仕事へのこだわりはどんなところにありますか?
佐野:まず受講してくださる方々の自己肯定感を上げることを重視しています。
笠井:ホスピタリティっていうのは、おもてなしの心じゃありませんか。それと自己肯定感が関係してくるんですか?
佐野:自己肯定感が低い人は、自分の価値とか存在意義を認めていないので、変化とか失敗を恐れるわけで、成長ができないんです。自分が自分を認めてあげなきゃいけないのに、自分でブレーキをかけてしまう。そうすると、自分がいっぱいいっぱいになって、他の人が見えなくなる。
笠井:相手のことを理解しようとするには、まず自分がちゃんとしなければいけないと。
佐野:自分に余裕がなければいけない。自分に余裕を持つとはどういうことかというと、自分を大切にして、私は大丈夫だという、文字通り自分を信じる自信。まずは自分にホスピタリティをかけてあげることから始まり、そこから相手に向けるホスピタリティになっていくと思います。
笠井:さて、後半は3つのキーワードを聞いていきたいと思います。まず第1のキーワードはモチベーション。佐野さんの仕事のモチベーションはどんなところにあるんでしょうか?
佐野:ホスピタリティをもっとこの世の中に広めていきたい、ということです。自分を大事にすると、自信が持てるようになって、相手が見えるようになるので、目配り、気配り、心配りができるようになる。そうすると、相手とwin-winの関係になりますよね。そして幸せになって、心が優しくなり、優しくなると、物を大切にするようになり、地球のこととかも考えるわけですよ。だから私はホスピタリティは地球を救うと豪語しています。ホスピタリティが世界中に広まったら戦争なんてなくなるんだろうなと思っています。
笠井:第2のキーワードは、信念。仕事への信念はなんでしょうか?
佐野:「守破離」という言葉を父がよく言っていたのですが、まず「守」は基本です。マニュアルみたいなイメージをしていただければ。マニュアルは大事です。過去のものをまとめて、こういう時はこうした方がいいよね、と。ただ、一人ひとり人間は違うので、それでは間に合わなくなってしまうことがありますよね。だから、一人ひとりに合わせた対応するための応用で「守」を「破る」と。そこで十分に経験を積み、色々な気づきを自分に持ったら、今度は自分のオリジナリティの世界を作っていくのが「離」です。
笠井:「離」は自分を作ってくこと?
佐野:そうです。守から離れて自分を作る。一つ上の高次の世界に行くということ。
笠井:マニュアルはみんなに共通の話であって、そこから離れて、自分自身を作っていく。
佐野:日本航空でもお客様一人ひとりを見て、マニュアルではないこともやってくださいねっていう教育もあるので。
笠井:客室乗務員なんて超マニュアルの世界かと思いますよね、実はそうじゃないと。
佐野:新人はそうかもしれないですけど、間違いなくやらなければいけないことがいっぱいありますから。でも、そうじゃないことを望んでいるお客様がいらしたときに、お客様の立場に立つとこういう風がいいなって思ったら、それをやって差し上げる。だから相手を見てあげないといけない。
笠井:そして第3のキーワード、未来へのビジョン。どんなものがありますか?
佐野:これからの日本を担う小さい子たちにもホスピタリティを浸透させたいです。自分をもっと大事にするようになれば、多分いじめもなくなります。子供向けの研修も多くなってきていますね。
笠井:佐野さんの研修を受けた方からはどんな感想がありますか?
佐野:今まで自分は固い頭をしていました、と。もっと周りにも優しくしなきゃいけないし、自分の行動、立ち振る舞い、それも変えなきゃいけないと感じます。というようなメッセージをいただきます。また、私が研修をしている会社さんは風通しが良くなります。社員がみんなホスピタリティを学ぶので、例えば、自分は仕事が終わったから早く帰るのではなくて、相手が大変だったら、手伝うことある?と一言かけるとか。優しさが満ち溢れて、感謝の念があり、ありがとうねっていう言葉が飛び交うみたいな、そういう社風に変わります。
笠井:就活でも、みんなそういう会社がいいなって思うようになりますよね。先生自身の未来のビジョンはありますか?
佐野:日本人の中で真のホスピタリティの意味を知っている人を増やしたいです。
笠井:今日このラジオを聞いた人は、その一端を掴むことがきっとできたと思います。
佐野:よかったです、みなさんホスピタリティを身につけてください。