1月20日(月)配信 有限会社信和土建 代表取締役社長 宍戸信照

1969年生まれ、神奈川県出身。82年、中学2年生の時に家業の基礎工事業を手伝い始める。職人として経験を積み、96年、父が倒れたことをきっかけに、27歳で父親の興した会社「有限会社信和土建」の代表取締役に就任。建築基礎工事のマイスターに認定された技術力を基盤に、妥協を許さない良質な施工で、主に建物の基礎工事を請け負っている。
笠井:建設業の主にどんなところを担ってらっしゃるのですか?
宍戸:私の会社は住宅の基礎工事やコンクリート工事を主にやってる会社です。
笠井:もう住宅の元々の一番重要な土台の部分ですね。建築職人のマイスター制度で認定されてるんですって?
宍戸:そうですね。年に1回、そういうコンテストがありまして、親元さんがそういうコンテストに応募するときに、私どもの基礎とかも一緒にセットで評価を受けるので、それでコンテストで何回か認定をいただいてます。
笠井:どんなマイスターをいただいてるんですか?
宍戸:鉄筋マイスターや、土を固める耐圧マイスター、あとは、「匠」という賞があったり。そういうのを2、3回いただいてますね。
笠井:ということは、仕事が確実で丁寧ということですね。
宍戸:自分のできる限りは丁寧にさせてもらっています。
笠井:従業員は何人ぐらいいらっしゃいますか?
宍戸:全員で4人ですね。たまにお手伝いは来ますがほぼ4人で、あとは同業の仲間たちといった感じです。
笠井:少数精鋭ってことですね。経歴拝見しますと、中学2年生の時に基礎工事の現場に出てると聞いたのですが、早いですね。
宍戸:そうなんですよね。うちの父親の会社が少し傾いちゃって、従業員が辞めちゃったんですね。そんな中から仕事を手伝うようになって。中学でちょっとやんちゃをしてた自分があって、高校も進学できないので、そのまま中学時代から職人さんになっていったという感じですかね。

笠井:若くして現場に出たことで、どんな良いことがありましたか?
宍戸:やっぱり早くからお金が稼げたというところが、若いうちは良かったかなと思います。あとは周りの職人さんもみんな厳しかったので、逆に今思えば良かったなと。厳しく育てていただきました。
笠井:じゃあ、もう早い時からいろんなことが身についていたのですね。で、27歳で代表取締役になられたと。これまた早かったですね。
宍戸:父親がくも膜下出血で倒れてしまって、現場には戻れないっていう形になったので、そこで代を変えました。
笠井:そうですか。とは言っても、もう15年ぐらいは経験積んでいるわけですよね。27歳で社長になって、大変だったんじゃありませんか?
宍戸:仕事はできるのですが、見積もりやお金関係が全然わからなかったので、そこがやっぱりすごく苦労したところです。
笠井:くも膜下は突然倒れますから、いきなり自分がやらなきゃいけなくなったのですね。で、私が考えるに、厳しい先輩職人さんの中で育ってきて、その方が突然部下になるわけですよね。社長とはいえ、バランスは大変じゃないですか?
宍戸:バランスというか、やっぱり目上の方は敬意を払うので、使ってるとか雇ってるとかっていう感覚じゃないんですよね。やっぱり同じ同僚なので、仕事を一緒にやっていただいてるという感覚で。だから、あまり上からとかではなかったかもしれないですね。

笠井:人生におけるターニングポイントというのは社長になったことですか?
宍戸:やっぱり若い時から仕事をやってると、結局職人って仕事ができた方が先輩になってくるんですよ、歳ではなくて。私は仕事ができてれば若造でも上に登っていけるってことがわかりました。仕事ができないイコールいつまでたっても若造なので、それを見返すには、人より仕事ができないと、いつまでたっても登っていけない。だから歳のせいで上から押さえつけられるのが嫌で、仕事を頑張ろうと、意識が変わりました。
笠井:つまり、技術を身につけるということですね。でもそれって、いわゆる年功序列のサラリーマンであっても、実力主義に変わっていく今の世の中じゃありませんか。職人の現場で早い段階から感じてらっしゃったんですね。
宍戸:それじゃないと生きにくいというか、同等に扱っていただけないので。
笠井:そういった思いが、いわゆるマイスターに認定される道に繋がってるんでしょうね。どんなに立派な家を建てても、基礎がしっかりしないと家がめちゃくちゃですもんね。見えないところなのに大事という。鉄筋マイスターを持ってらっしゃるとはいえ、土台ってコンクリートじゃありませんか。そこは、鉄筋のとこは普通、鉄筋業者さんが入ってくると思うのですが。
宍戸:昔はみんな自分たちで鉄筋を組んだのですが、今は鉄筋を加工場に出して、専門の業者が組んだりするのですが、うちは全部自社加工でやっています。やっぱり自分が同じ現場で同じことをしないと気が済まないので、2班作っても、結局私の体は2つにならないので、自分がやれない仕事はなるべく手をつけないみたいな。
笠井:お客さんからすると、しっかりと最後まで宍戸さんがやってくれるので、ありがたいし、評判もいいんじゃありませんか?
宍戸:賛否両論だと思います。丁寧だけがいいというお客様もいないですし。1回仕事をさせていただいて、ずっとお付き合いできるお客様もいますし。
笠井:仕事をしていて嬉しい瞬間はどんな時でしょうか?
宍戸:穴を降り終わった時に、子どもたちが学校帰りに穴を見て「綺麗だね」と言ってくれたり、近所のおじさんから遺跡の発掘してるのっていうようなことも言われたこともあるし。
笠井:遺跡の発掘ってものすごく丁寧にやらないと壊してしまうので、つまり、仕事が丁寧ということを通りがかりの人が言う。もう素人が見てもわかるんですね。
宍戸:見てわかっていただけるように頑張ってはいます。機械でできるとこは機械でやるし、手でやらなきゃいけないところは、大変だけど全部手作業でやるという風に。
笠井:経営理念はどうでしょうか?
宍戸:建て売りであろうが、注文建築であろうが、値段が高かろうが安かろうが、仕事には差をつけないというのがうちの経営理念です。絶対に手を抜かない。
笠井:そしたら信和土建さんに注文住宅作ってもらいたいな。最後にこれからのビジョンをお聞かせください。
宍戸:うちはどういう形になろうが、だんだん先細りしている中でも、今の体制で現状維持を続けていくっていうのがこれからの課題だと思っています。
