5月6日(火)配信 CMA株式会社 代表取締役 鷲見哲雄

1973年生まれ。1997年に京都産業大学経済学部を卒業後、二幸株式会社に入社。物流センターのシステム導入やIT化を推進。その後、システム開発会社へ転職し、国内外の中小企業向けに物流IT支援を実施。岐阜へUターン後、オンプレミス型パッケージメーカーに勤務。2015年にはインドネシアの日系工場で生産管理システムを導入。2018年、CMA株式会社を設立。
笠井:CMA株式会社では、どのようなお仕事をされていますか?
鷲見:弊社ではクラウド型・SaaS型の生産管理システムの販売・営業をメインに行っています。主な取り扱い製品は、Microsoft製品のOffice 365などです。また、自社開発の「Othello Connect(オセロコネクト)」という、中小規模の製造業向け生産管理システムも提供しています。
笠井:クラウドやSaaSということは、パソコンにソフトをインストールしなくても、インターネット経由で利用できるという仕組みですね。鷲見さんの経歴がユニークですが、大学卒業後はアパレルの総合商社に就職されたそうですね。ITとは無関係の分野ですよね。アパレル業界ではどんな仕事をされていたのですか?
鷲見:最初は営業に配属され、主に既存のお客様を訪問していました。2年目からは、ちょうど情報システムの刷新プロジェクトが始まり、営業から情報システムの経営企画室に異動となりました。
笠井:そこでITへの興味が芽生え、クラウドの世界へと進まれたのですね。
鷲見:アパレルではSKUの色やサイズなど、在庫管理が非常に重要になります。人の手だけでは管理が難しく、システムの導入が不可欠でした。その時にクラウドサービスを利用し始めたのが、私にとっての最初のクラウド体験でした。その後、そのシステムを開発していた会社へ転職しました。
笠井:その後、岐阜にUターンされてオンプレミス型システムを扱う会社に転職されたと。クラウドとは正反対の仕事ですね。その経験が、今のクラウドサービス会社設立につながったのでしょうか?
鷲見:まさにその通りです。振り返ると、あの経験が一番大きな転機だったと思います。クラウドは非常に便利で、これからの時代のニーズにもマッチしている。インフラとしてのSaaSサービスには、大きな可能性があると感じました。

笠井:製造業では、まだオンプレミスで自社サーバーを使っている会社が多いのでしょうか?
鷲見:実際、9割以上がまだオンプレミス環境だと思います。
笠井:コストの問題もあるかと思いますが、セキュリティ面では自社サーバーの方が安全なのでしょうか?
鷲見:セキュリティについては、しっかりとしたクラウドサービスの方がむしろ安全性が高いと考えています。
笠井:DXの観点でも、オンプレミスでは不利な面があるのでは?
鷲見:はい、限界があります。パッケージソフトは購入した瞬間から陳腐化が始まりますし、企業の変化に柔軟に対応できないという課題があります。
笠井:クラウドサービスは自動でアップデートされるのが利点ですね。
鷲見:そうですね。必要な機能を随時バージョンアップしていけるので、常に最新の機能を使えるというのは大きなメリットです。
笠井:CMA株式会社の「オセロコネクト」も定期的にバージョンアップしているのでしょうか?
鷲見:はい。お客様の声を取り入れながら、必要と思われる機能は積極的に追加しています。
笠井:今のお仕事で大切にしていることは何ですか?
鷲見:できる限り現場に近い立場で、お客様の声を大切にしています。自分本位で「これがいい」と思い込む製品があっても、それが本当にお客様に必要かは別問題です。リサーチをしっかり行い、本当に必要な機能を提供したいと考えています。
笠井:製造業のクラウド導入を進める中で、何か意識されている点はありますか?
鷲見:創業当初は、社内にサーバーがあるのが当たり前で、外部にデータを出すことに抵抗のある企業が多くありました。しかし最近では、クラウド製品を積極的に探す企業も増えてきたと感じています。

笠井:「壊せるものはないか」というキーワードが印象的ですが、それは既存の概念を壊すということですか?
鷲見:はい。今まで当たり前と思っていたことが、実はそうではないというケースもあります。それは一度「壊してみないと」気づけません。常に変化を求め、疑う姿勢を持ちたいと思っています。
笠井:古いやり方や固定観念にとらわれている企業も多いですか?
鷲見:まだ多いと思います。立場的に急な変化は受け入れられにくい部分もあります。ただ、「このままではいけない」という危機感を持っている経営者は増えていると感じます。
笠井:CMA株式会社のクラウド生産管理サービス「オセロコネクト」は、どのようなものですか?
鷲見:製造業の生産管理に関わる業務、たとえば調達・発注・仕入れの管理、作業進捗の可視化、現場や機械の作業予定などを一元管理できます。また、販売管理や在庫管理なども包括的にサポートしています。
笠井:中小企業向けにしているのは、何か理由があるのですか?
鷲見:大企業は資金力があり、独自にシステムを導入できます。一方で中小企業はそういった投資が難しいケースもある。だからこそ、手頃な価格で導入できるサービスを提供したいと考えています。
笠井:DX化に高コストのイメージがある中、導入しやすい選択肢になりそうですね。実際、DX化によって業務の効率化や人員最適化が期待できるのでしょうか?
鷲見:まさにその通りです。2025年問題と言われる人手不足やサーバー更新の問題は、人に依存する部分が大きい。クラウドを活用することで、企業体力を温存する手段になると考えています。
笠井:CMA株式会社の企業理念を教えてください。
鷲見:一つはグローバル化に対応し、世界で通用する製品や人材を育成すること。もう一つは、変化への柔軟な対応。世の中の変化は早く、その波に乗り遅れないよう常に追随する姿勢が必要です。そして、柔軟な働き方の実現。創業当初から全社員リモートワークを導入し、家庭や自分の時間も大切にできる働き方を推奨しています。
笠井:様々な経験を経て、今どんなことを感じていらっしゃいますか?鷲見:「日進月歩」の気持ちです。これまでの転職や経験の積み重ねが、今の会社の土台になっています。30代の苦労や、お客様に叱られた経験が、今のお客様と向き合う姿勢や原動力になっていると実感しています。
