7月28日(月)配信 岐阜自動車輸送株式会社 代表取締役 田島恭子

1990年に不二サッシ株式会社入社。1997年に結婚を機に退職し、子育てに専念。その後、当時父が社長を勤めていた岐阜自動車輸送株式会社に入社。2018年に代表取締役に就任し、現在に至る。
笠井:岐阜自動車輸送という名前からすると、自動車を運ぶ会社でしょうか?
田島:そうです。岐阜車体工業という会社がありまして、そこの新車運搬をしております。あと、その新車を運ぶための構内作業の車の運搬もしております。
笠井:構内ということは工場内でできた車を移動するということだと思うのですが、それは一台一台運転するのでしょうか?
田島:そうです。新車を一台ずつ運んでいます。
笠井:どこの車を扱っているのですか?
田島:トヨタです。
笠井:それは工場からディーラーさんへ運ぶお仕事もしているのでしょうか?
田島:工場からまずヤードまで運び、そこからまたうちのトレーラーで名古屋港などいろいろな港に輸送しています。
笠井:車の運転が好きなら素敵なお仕事ですね。だけど傷をつけてはいけない大事なお仕事でもありますね。
田島:とても大事です。
笠井:最終的にはキャリアカーに乗せて運ぶのでしょうか?
田島:そうです。
笠井:田島社長の経歴を拝見すると、そもそも建材サッシ関連の大手メーカーに勤めていましたが、結婚を機に退職され、主婦になられたのですね。
田島:そうですね。子育てに専念していました。
笠井:ところが2008年、岐阜自動車輸送に入社され、その10年後に社長に就任されていますが、この急展開の人生は想定していたものですか?
田島:想定していません。自分でも驚いています。

笠井:自動車輸送の仕事に就いたきっかけはなんでしょうか?
田島:当時社長をしていた父から急に「事務をしていた方が辞めるから、明日から来い」と言われました。
笠井:来いというのは、パートとして入社するということですか?
田島:そうです。当時の私は銀行でパートをしていたのですが、
父は昔の人なので、すぐ明日から来いと言われました。
笠井:もともとこの会社を継ごうとは思ってなかったのでしょうか?
田島:思ってなかったです。
笠井:いつ頃から自分は社長になるかもしれないと感じていましたか?
田島:父がよく電話で「うちの会社買ってくれ」とトヨタ輸送さんとかに言っていたのですが、周りから「娘に継がせる」という話がチラッと聞こえてくることもありました。そして、事務の仕事をしている時に「やるか」と父に言われ、「他の人には任せられないな」と思い社長就任を決めました。
笠井:その時のお立場は、専務とか副社長とかですか?
田島:いえ、普通の事務員です。
笠井:ある程度の立場に立ち、この人は将来を継ぐよっていうシグナルを送るのが一般的だと思いますが、本当に突然言われたのですね。
田島:そうですね。ただ、10年ぐらい経理関係を全て担当していましたし、乗務員さんも見ていたので、私がなるのが自然なのかなと思いましたね。
笠井:経理から急に社長になられたということですが、お仕事へのこだわりを教えてください。
田島:配送業界は、人手不足です。そのような中、弊社をあえて選んできてくれた社員はやはり大事にしたいですね。それから、最近は若い子も増えたので、若い子が知り合いを連れてきてくれることも結構あります。
笠井:それは、入ってきた若い子が「この仕事面白い。いい会社だ。」と思っているからですよね。
田島:そうですよね。
笠井:若い方を雇用するために、どんなことをされているのでしょうか?
田島:あまり難しいシステムはないですが、働きやすい環境を大切にしています。例えば、「おばあちゃんの病院の送迎をしたいから、ちょっと仕事に穴をあけるかもしれません」と言われたときも「やりやすい時間帯で働いてね」と伝えています。基本は、昼勤と夜勤の交代ですが、中には事情があって、夜勤しかできないとか、昼勤しかできないという方もいますので「その人に合わせて働いていただく」ということを重要視しています。
笠井:とても大事なことですね。実際に働いている皆さんの反応はいかがでしょうか?
田島:私が社長になってから、先代の社長のときよりも雰囲気が変わったと言われます。
父のときから働いている方もいますが「先代とは雰囲気が違うけど、私は私のカラーでいいんじゃないか」と言ってくださいます。あとは、話しやすいのか仕事以外にも奥さんとの悩み事や子どもの話など、他の管理者に言えない話を私にこっそり言いに来てくれる方もいます。
笠井:それは、女性社長が持っている強みですね。
田島:私もこれは強みだなと思っています。
笠井:会社のお母さんみたいな存在ですよね。
田島:そうかもしれません。どうしても母親目線と奥さん目線で見てしまいます。だから若い社員は、息子のように「大丈夫かな」「ちゃんと食べているかな」と思ってしまいます。
笠井:私の妻も、若い方に対して母親目線になってしまうとよく言っています。
田島:どうしても母親目線になってしまいます。
笠井:でも今の企業の中では、そういった温かさも重要だと思います。
特にこういうがてん系の会社は、昔はとにかく体力勝負でお金稼ぐような形でしたが、今はそういう時代ではないですからね。
田島:昔はそうでしたね。稼ぎたい人は、どれだけ乗っても良かったのですが、今は制限がありますので、管理する側は制度を守りつつ、上手に稼げるような仕組みを作っています。
笠井:さて、後半は、3つのキーワードで仕事との向き合い方を伺っております。第1のキーワードは、モチベーションです。田島さんの源はなんでしょうか?
田島:乗務員さんがやはり辞めずに元気よく会社に来てくれて、無事に帰ってきてくれることですね。モチベーションということはないのですが、やはり自分が元気じゃないと、乗務員さんも元気がなくなってしまいますよね。私が変な顔してたら、乗務員さんも多分嫌がると思うので、私はニコニコしてたいなと考えています。
笠井:今聞いたお話からすると、社員の皆さんやご家族が笑顔でいることが、やる気につながっている感じがしました。
田島:そうですね。

笠井:第2のキーワードは、信念、信条、大切にしていることです。
田島:新車なので、やはり傷なく、大切に運ぶことを大切にしています。私たちの仕事の先にまだ輸送の作業はあり、最後のお客様の手元に届くのはもっともっと先かもしれませんが、傷なく届けたいですね。
笠井:一番最初の輸送を担っているのですね。
田島:そうですね。日本国内だけではなく、輸出の車もあるので海外かもしれませんが、とにかく傷をつけずに、乗務員さんも怪我しないように、そして効率よくルールにのっとって、物を運ぶということが信念です。
笠井:そうですか。最後、第3のキーワードは未来へのビジョンです。70年を超えている歴史ある会社ですが、今後の目標を教えてください。
田島:地域の皆さんにも、やはり大事にされたいというのもあります。正直、大きな車は苦手な方が多いですよね。
笠井:確かに「邪魔だな」と感じる方もいらっしゃいますよね。
田島:そうです。やはり地域の皆さんにも「いつもありがとうございます」とご挨拶するなどしています。
笠井:キャリアカーは何台ぐらいお持ちなのでしょうか?
田島:今は、25台ほどあります。
笠井:それはすごい迫力ですね。地域の人にとっては、すごいインパクトが強いと思うので、余計に地域との交流が大事になりますね。
田島:そうですね。子供会で夏祭りをやる際など、少ないですがお金を寄付し「どうぞ皆さんで楽しんでくださいね」と伝えています。あとは大家さんとかに会ったら「いつもありがとうございます」と必ず声をかけています。
笠井:やはり地域に根付いた経営というものは大切なのですね。
田島:そうです。あとは、トヨタ輸送さんから一年に課されている基本能力というのがあります。それを必ず守って、トヨタ輸送さんからも信頼がされ続ける会社でありたいなと思います。
笠井:そうですか。ここまで仕事が続いているのは、確かな仕事ぶりが評価されているってことだと思います。大変だと思いますけれども、これからもトヨタ自動車の新車を最初に運ぶお仕事、頑張ってください。
田島:頑張ります。
