6月2日配信回
2025.06.02

6月2日(月)配信 TOTALMASTERS株式会社 代表取締役 玉里芳直

略歴

中学校を卒業後、土木現場でアルバイトを始め、21歳で独立。2004年にTOTALMASTERS株式会社を設立し、主な事業である、建設事業では他社よりICTシステムを先進的に導入し、差別化を図る。現在は、建機施工のICT化を主導し研究開発を行い、業界のDX化を推進している。

笠井:TOTALMASTERSはどんな会社でしょうか?

玉里:主に土木事業を営んでおります。

笠井:玉里さんの経歴を拝見しますと、なかなかユニークでいらっしゃいます。中学校を卒業後、土木現場でアルバイトを始め、21歳で独立。どういう理由で中学からすぐ土木の方に進まれたのですか?

玉里:簡単に言うと、勉強する意味がわからなかったので、勉強せずに働こうと思いまして。何も考えずにアルバイトに行ったところが、たまたま土木でした。

笠井:アルバイトでどんな経験をしたのでしょうか?

玉里:ただ言われたことをやるのですが、最初は全然わからなくて、もう毎日辞めたかったです。ですが、だんだんわかってきたら、結構楽しくなって。それからも毎日辞めたかったのですが、ただ、せっかく人から必要とされて、自分もやっていることが理解できたので、この仕事でとにかく追求していこうという気持ちでした。

笠井:いい出会いはありましたか?

玉里:僕の今が形成されているのは、恩師のおかげです。生き方を教えていただいた、掛田さんという方がいまして。

笠井:どんなことを教わったのですか?

玉里:人として基本的なことですね。礼儀正しくしろとか、親に迷惑かけるなとか、弱いものに優しくしろとか。生き方を教えていただいて。僕は結構擦れていたというか、冷めていたものですから。人のこと信用もしない、人に迷惑もかけないし、人に頼らないという考えだったのですが、やっぱり人と関わらないといけない仕事なので、人に対してどうあるべきかと、男としてどうあるかというのを叩き込まれました。人生って出会いが大事ですね。ほんとに、僕みたいなクズでも出会いで変わったので、若い子たちにも出会いを大切にしてほしいと思います。

笠井:土木作業員における、人との繋がりを大切にするというのは、仲間を大切にするということなのでしょうか?

玉里:とにかくまず身内を大事にすること。僕が大きく事業を展開したいって言った時に、彼はやはり保守的な立場をとったのですが、僕がやることは応援してくれて。内を固めて外に攻めるという事は本当に必要だと思います。

笠井:内を固めて外に攻める、今もその精神でやってらっしゃるということですね。

玉里:ちょっと浮き足立ってしまう性格なものですから、浮き足だった時に彼の言葉に戻れるのがすごく大事です。

笠井:独立されたのは21歳、早いですね。TOTALMASTERS株式会社の強みはどんなところにありますか?

玉里:中小企業では珍しく、ICTの技術開発もできることです。

笠井:ICTというと、情報通信技術ですよね。要するに、コンピューターシステムだけでなく、インターネットも含めた環境で土木作業を進めていく。土木作業員の高齢化による人手不足が懸念されているかと思いますが、DX化、ICT化によって効率よく一人の作業量を増やしていく。具体的にはどういうところに使うのでしょうか?

玉里:我々が特に着目しているのは、油圧ショベルと言われるショベルカーを、ゆくゆくは人が動かさずに機械が自動で動くというところを目標にしています。例えば今だと、ビルの基礎を掘るときに、平面図という図面を見ながら人が指示をして、ショベルカーが掘っていますが、ショベルカーに高さと位置を認識させ、オペレーターがその画面を見ながら掘ったり盛ったりする。そういうガイダンスシステムを作っています。

笠井:作業図を3D化、立体化すると。熟練の技術がなくても、それに従って掘っていけば良いと。国交省が推奨しているそうですね、アイ・コンストラクションという。

玉里:はい。ただ、それが良くも悪くもコストが下がらない原因でして、我々はコストをパフォーマンスで解消していくというところに着目して、大手さんと一緒にやっています。

笠井:後半は三つのキーワードをお伺いしております。まず一つ目、玉里さんのモチベーションはなんでしょうか?

玉里:ワクワクですね。ワクワクとテクノロジーを掛け合わせ、Waktechというサービス名をつけています。

笠井:続いて第二のキーワード、信念。大切にしていることはどんなことでしょうか?

玉里:なるべく携わることの全てを追求して極めるのが、TOTALMASTERS。それを信念としています。我々は、土木作業に革命的な行動を起こす集団だと思っています。建設業に携わる労働者の人たちに光が当たれば、我々がやってきたことが報われるというか、胸を張れると思います。結局今は現場で人が動かないとモノは作れないので、せめてそこで汗をかいて危険な思いをする人たちに関わるサービス、ソリューションを提供して、その人たちの対価を上げる、モチベーション上げる、そういうことをやりたいなと思っています。DXと言うと結構言葉が踊っているのですが、やはり現場は地味で、すぐに変わらない現実があると思います。我々は先進技術で気取らず、自分たちが今できる最適化を提供しています。

笠井:土木作業のDX化と言われると、現場の人間としては言葉が踊っている感じがするわけですか。

玉里:そうですね。AIを使えばどうにかなるって、本当にそうなんですかという感じで。ただ、今できることをきちっとやって、現場の人たちに賛同され、前向きになっていくっていうのがすごく大事だと思っています。今は、現場の人が否定されているような雰囲気も少しあるので、現場の人たちに自分たちのためになるのだっていうのを分かってもらう、気づきを与えるために、サービス展開しています。

笠井:事故なく、無理なく、かっこよくというキーワードを聞きました。

玉里:事故とは背中合わせですし、無理しないと終わるものも終わらないし。かっこよくと言ったって、汗だくになって泥にまみれたらかっこよくないので。キャッチフレーズはそれでいいんですけど。現実は少しずつ変えていかないと。

笠井:それを変えるのが、情報通信技術を取り込むことだということですね。

玉里:その可能性はあると思います。ただし、やはり人が価値を生み出す世の中なので、人が輝くような、寄り添うようなサービスでないといけないなと思っています。例えば建設機械と人の安全管理ですね。やはり本音と建前が違って、重機が動いているそばに労働者が立ち入らないといけないところがあるのですが、もう少しちゃんと論理的に解析して、安全の質を確保するために、もう少し現場で色々な情報を取って分析しないといけないと思っています。

笠井:今後の未来へのビジョン、今どこに興味がありますか?

玉里:今はWaktechマシンガイダンスシステムをアジアに展開することを考えています。

笠井:特に海外の方はまだICT、DX化みたいなものが遅れているのかもしれませんよね。

玉里:カンボジアやミャンマーに拠点があるのですが、そこの建設労働者の作業を見ていると、なかなか重機作業の効率が良くなくて。ですが、我々のシステムを使えば日本の作業効率と同等まで上げられると思っています。カンボジアとかミャンマーは日本よりもコストが高い傾向があるため、機械の効率を上げれば海外でもニーズはあるのではないかと思っていて、そこに対してアプローチしようとしています。