7月8日(月)配信 株式会社ロジクロス・コミュニケーション 代表取締役社長 吉村武久
1974年、大阪出身。関西学院大学在学時に南アフリカ共和国にて「銃を鍬にするプロジェクト」を現地警察と連携取り組み、「人種融和コンサート」などを企画開催する。卒業後は大手経営コンサルティング会社でマネジメントコンサルタントとして活躍。2002年からはSCM【サプライチェーンマネジメント】のコンサルティングと開発受託事業に特化した8名のベンチャー企業に参画後、物流の重要性に気づき、2006年に株式会社ロジクロス・コミュニケーションを設立。SCMおよびロジスティクス領域でのコンサルティングおよび4PL事業(物流機能アウトソーシング)を手掛ける。
笠井:ロジクロス・コミュニケーション、物流関係のお仕事だと聞いているんですが、どんな会社なのでしょうか?
吉村:物流のコンサルティング会社でして、サプライチェーンマネジメントとかロジスティクスの領域に特化して、製造業や卸商社、小売業、通販企業などの、物販をされている企業の経営改革のご支援をさせていただいているプロジェクトマネジメント会社です。
笠井:ロジスティクスってことは、製品の保管、輸送、包装、流通、加工などを一括でコンサルしていると。吉村さんは元々いた経営コンサル会社を5年で辞めて、そのあと参画したベンチャー企業で物流業務のオペレーション改善に出会ったと伺いました。約20年前の当時にロジクロスを作ったってことは、物流に関するビジネスの要素は重要だと考えたと。どういうところが重要なんでしょうか?
吉村:物流と言っても、物流業界の会社の人たちに対するコンサルティングというよりは、荷主業という、物を売っている会社の中での物流が、経営機能の中であまり重要視されていない時代だったんです。今では相当物流の価値は見直されていますが。
笠井:ビジネスと運搬が直接的に結び付いていなかった時代に立ち上げたということは、勝算があったってことですか?
吉村:そうですね、感じましたね。今は19年目で、社員はグループで60人。売り上げはまだ十数億。
笠井:ロジクロスは、物流業務の改善を事業とするコンサルのようで、実は相談に乗るだけの会社ではないようですね。
吉村:例えば、物流の在庫の持ち方とか、倉庫の配置、システムといったものは、一度構築をしてしまったら間違えたと言うことができないわけですね。ですから、現状の仕組みを最適化し、あるべき仕組みに変えましょうと絵に書いて提出するだけではなくて、現実の世界で構築をしていく中で、並走するようなパートナーが求められます。コンサルティングのフェーズの後は、細かい仕組みの要件定義をしなければいけない。その後でやっと現場とシステムとを立ち上げていくと言えますので、コンサルタントだけではなく、エンジニアとか、あるいはセンターを立ち上げる現場のマネージャー職が必要になってきます。
笠井:さて、後半は三つのキーワードでお話を伺います。第一のキーワード、吉村さんの仕事に関するモチベーション、その源はどこにあるのでしょうか?
吉村:クライアント企業のプロジェクトメンバーの皆さんに喜んでいただくことです。あとは、最適なロジスティクスを構築することが、そのクライアント企業のプロフィットの源泉になること。ただ物を保管するとか出荷するとかではなくて、ロジスティクスには三権分立でいう司法みたいな役割があって。在庫を持ちすぎていないか、ものを作りすぎていないか、あるいは営業がお取引先と取り決めた期日にしっかりと商品を納められるかとか。
笠井:製造部門や営業部門とも連携してくると、配送の一部門の話じゃないんですね。ロジスティクスの考え方が、多岐にわたって、会社全体を整えていくことにつながると。
吉村:物流費というコストは、お客様の損益計算書の中で言う原価とか、あるいは販売管理の中の荷造運賃の多くを占めておりまして、コスト構造を明らかにしながら最適化することは、筋肉質の会社づくりに直結していくんです。
笠井:続いて第二のキーワードは、信念。ロジクロス憲章というものがあるそうですが、これはなんですか?
吉村:ロジクロスクレドという憲章を社員の皆さんに配布しています。性格は十人十色で構わないのですが、考え方、価値観は社員みんなで共有することが大事だと思っていまして。ビジョンは4点ありまして、まず1つ目に、己の心に誠実を刻み、我が使命を生涯追求すること。2つ目が家族、社員と価値及び幸せを分かち合うこと。3つ目に顧客、パートナーと目的達成を喜びを分かち合うこと。で、4つ目に現在と50年後の社会に対して貢献を行うこと、と挙げております。
笠井:現在と50年後の社会に対して貢献を行うというのは?
吉村:50年後は、我々の二世代先の人たちが社会で活躍している時間軸です。ロジスティクスは一つの企業の中での最適化になるんですれども、各企業を合わせていくと流通というものになっていきます。で、日本経済の中での流通の仕組みがより良くなっていくことは、人々の暮らしが豊かになることにも繋がります。社員にどこを見据えて仕事をしてもらうかという時に、二世代先の社会作りに貢献しているプロジェクト、そういう考え方でやっていきましょうと、そのために言葉を入れています。
笠井:第三のキーワード、未来へのビジョン。吉村社長がやりたいこと、挑戦したいこと、どんなことがあるのでしょうか?
吉村:最近新しい言葉として「フィジカルインターネット」が出てきています。フィジカルは物質、物体のこと。これがインターネットというデータ空間を表すような言葉に繋がっていますから、一見すると矛盾を起こしているような、イメージが湧きにくい単語ですけども。在庫情報とか、トラックの情報とか、倉庫とか工場、店舗の情報、そういったあらゆる情報をデータにして、一つの企業だけではなく多くの企業で共同で有効活用していこうと。今年は2024年問題ということで、現場で働く人の数が足りない、働く人が見つからないとなってきますので、一人当たりの生産性を高める仕組みを作っていかなければいけない。そのために共同輸送、共同倉庫、あるいは在庫、資産のデータを共有化していく。弊社ではそういう運営事業を展開し始めております。
笠井:複数の企業を結びつけていく仕事になりそうですね。実際、その提案に対するお客さんの反応はどうですか?
吉村:取り組みはこれから始まっていくのですが、いろんな企業様からご相談を多数いただいています。実は、空間のデータや時間のデータは企業の中のシステムに情報としては入っていないんです。けれども、そういったデータは物流の中にたくさん埋もれていまして。このデータを蓄積していくことで、フィジカルインターネットのデータを結びつけていくことにも繋がっていくし、これからの日本、あるいはグローバルのサプライチェーンがより最適化するという、こういった気付きを提供していくことができるのではないかと考えております。今ちょうど、時間データと空間データをAIを使って分析していくデータアナリスティング事業にも展開しようとしている最中です。