4月7日(月)配信 株式会社ギフトタンク 代表取締役 Zinney Imasato

2016年に愛犬ブラッキーと出会い、初めて訪れた岡山県動物愛護センターで出会った殺処分の危機に瀕した「トキ」「愛ちゃん」「サンクス」の命の請負人となり、彼らの犬生をサポートしていくと決める。そのことがきっかけで動物保護活動を企業が率先して行うモデルを作りたいと思い起業。アニマルインタープリターの育成などを行う株式会社ギフトタンクを設立。
笠井:見たところ、日本人とお見受けするのですが、名前がZinney Imasatoさんと特徴的ですね。
Zinney:日本人です。子どもの頃からニックネームでジンと言われていたんですが、その後、海外の方とお会いすることがあって、Zinneyと呼ばれるようになり、だったらもうZinneyにしようと、この名前になりました。
笠井:それでは、Zinneyさんと呼ばせていただきます。日本初の動物通訳士を養成する学校を運営されているそうですね。なかなか聞いたことがないお仕事ですが、動物通訳士とはどういうお仕事でしょうか?
Zinney:動物が伝えたいことや感じていることを、オーナーさんや保護団体の方にお伝えするというような仕事です。
笠井:それはワンちゃんやネコちゃんに対面することによって、動物の気持ちが分かるということなんですか?
Zinney:基本的には対面しなくても、オーナーさんと会えばだいたいのことがわかります。
笠井:そうなんですね!
Zinneyさんのキャリアが気になりますが、福岡出身で、子どもの頃から動物が好きで獣医師を目指していたところ、突然グラフィックデザインの道へ進み、その後アーティストのマネージャー、作詞家、ボイストレーナー、フィジカルトレーナーとして活躍されていました。どんどん動物から離れていくんですけれども、これはどういう歩み方なんでしょうか?
Zinney:あんまり自分でこれをやりたいとかいうのがなかったので、流れに身を任せてたらこんなふうになっちゃいました。

笠井:いわゆる芸能関係に進まれたんですが、2008年に引退されて、その8年後の2016年に動物保護活動を始められたんですね。動物保護活動に取り組むきっかけは何だったんでしょうか?
Zinney:子どものころにあった出来事がきっかけです。小さい頃家の近くに住み着いた野良犬がいて、ご飯をあげていました。ある時、保健所に通報され連れて行かれちゃったんですよね。近所の方が教えてくれて、すぐ保健所に行ったんですけど、当時は通報があるとすぐ殺処分だったんです。
笠井:それはショックでしたよね。
Zinney:ものすごくショックでしたし、やっぱり保健所は悲壮感の漂う場所だったんですよ。犬たちが自分を迎えに来てくれたのかと駆け寄ってくるんです。本当は全員連れて帰りたかったんですが、子どもなので泣きながら帰りましたね。
笠井:そうですか。
Zinney:若い頃にボランティアは覚悟が大事だと言われたことがあって、その言葉の意味がわからず保護活動に踏み切れませんでした。何か自分らしく保護活動ができるきっかけがないかなと思っていたときに、たまたま今の愛犬に出会いました。里親探しの写真が出てきて、一目惚れをして岡山の動物愛護センターにいきました。
笠井: 引き取ろうとしたんですね。
Zinney:そうです。動物愛護センターも哀愁に満ちた空間で、スタッフさんから「誰かに迎えに来てもらえる子がラッキーで、それ以外はやっぱり2週間過ぎたら殺処分されることもあるし、できるだけ引き出して、里親さんに繋ごうとしてます」と伺いました。ただ、どうしても噛んでしまった子とかは、もう殺処分がすぐ決まってしまうんです。
笠井:そうなんですか。
Zinney:スタッフの方から「あの柴犬は噛んだからもう殺処分される」と聞いてその柴犬を見たんですけど、見ていると大丈夫なんじゃないかなと思いました。そこから私は岡山まで頻繁に通って、「この子を任せてもらえませんか」と交渉しました。引き取ったあとは、トレーナーさんの元でトレーニングをし、そこから保護活動が始まったんです。
笠井:そこで動物保護活動から、今では動物通訳士の育成などを行うギフトタンクという会社をつくられたということですが、動物通訳士というお仕事に気持ちがいってるのはどうしてですか?
Zinney:やっぱり犬が噛むとか吠えるとか、絶対理由があるはずなんですよね。例えば自分のテリトリーを守るために頑張って噛んじゃって、それで殺されるってやっぱりおかしいなって思ったんです。
笠井:なるほど。
Zinney:私が「この子大丈夫じゃないですか」と言ったときも、誰にでも攻撃性がある子ではなくて、やっぱり理由があったんです。「こういうふうに接すれば大丈夫ですよね」と伝えて、みんなに見せると「本当だね」と分かってくれるわけです。それでトレーニングやしつけをしてみようという風潮が出てきてから、少しずつ望ましい環境になってきたと思っています。
笠井:そうなんですね。動物通訳士になると何か仕事につながったりするんですか?
Zinney:いろいろありますが、主にオーナーさんから直接「今ペットの具合が悪いんですけど、何をしてあげたらいいですか」などの相談を受けることが非常に多いです。あとは「吠える・噛むなどの問題行動が多いのはどうしてですか」とかいう相談もあります。
笠井:それは動物通訳士の方がコミュニケーションという形で、今お宅のワンちゃん、ネコちゃんはこういう思いでいますよというような相談にのっていく。それは飼い主さんへのカウンセリングのような役割も当然果たしますよね。環境とか、ペットと飼い主との関係性、そういったことも大きいですよね?
Zinney:もうそれしかないぐらいです。やっぱり吠えるとか噛むとかも関係性なんですよね。うちにいる3頭のうちの2頭は噛み犬で、もう手がつけられなくなって来ているんですけど、今は全然噛まないし、むしろすごくいい子なんです。ただ怖がりで、怖がりが行き過ぎて噛む行動にいってしまった、みたいな。
笠井:結局その原因といったものを、「こういうことで吠えてますよ、噛みますよ」ということが分かってくれば、それに対して飼い主さんも次の一歩が踏み出せるということになるわけですね。
Zinney:動物との関係性を見つめ直していただくいい機会になっていると思います。
笠井:動物通訳師というこのキーワードがあまりにも衝撃的で、「犬や猫と話せる」という仕事かなと思ったらそうではないということも見えてきました。
Zinney:ありがとうございます。

笠井:後半は3つのキーワードでお仕事の向き合い方を伺っております。第1のキーワードはモチベーション。Zinneyさんの仕事のモチベーションはどこにあるのでしょうか?
Zinney:モチベーションはやっぱり動物にあります。
動物がやっぱりハッピーに過ごしている姿を見ることが嬉しいですね。
笠井:サポートした、あるいは救い出した動物たちが楽しそうにしているのは、モチベーションになりますね。第2のキーワードは、信念。仕事をする上で大切にしていることはなんですか?
Zinney:仕事をする上での信念は、人を当てにしないということです。自分の力だけでやることを大事にしています。
笠井:自分自身をしっかりと思って、人を頼りにしすぎないということですね。
Zinney:そうですね。時には心の部分では頼ったりすることが必要かもしれないですが、例えばあの人についていったらいいことがあるかもしれないとか、お金のことなど、人の力を当てにすると、自分の本来の力が出なくなるような気がするんですよね。だから人を当てにしないようにしています。
笠井:そうですか。そして第3のキーワードは、未来へのビジョン。今後の目標とか今やってることの何か夢とかありますか?
Zinney:そうですね。私自身の夢とか言うのはないんですけど、ヨーロッパとかアメリカとか行くと、普通にホテルとかにも一緒に動物が泊まってたりとかするんです。ペットOKのホテルじゃなくてもです。
笠井:確かに飛行機なども、普通に客席の方に乗ることができたりするのが海外だったりします。
日本の場合、「動物アレルギーの人がいるから、配慮しなさい」という意見もありますよね。そういう方たちの意見も取り入れながら、区分けしているということですよね。
Zinney:そうですね。でも私は共存は可能だと思っています。アレルギーなど問題も多くありますが、やっぱりペットと一緒の空間にいて、普通に過ごせるような環境がどんどんできていけばいいなと思います。
笠井:そうですか。これからも動物たちを、そして飼い主さんの心を救ってあげてください。
ありがとうございました。
